資本利益率でわかる会社の実力~ROA・総資本経常利益率・ROE

会計

会社の実力を総合的に評価する指標は、経営に投下した資金がどの程度効率的に運用され、利益を生み出しているかを示す「資本利益率」です。
ところで、資本利益率には次のような種類があります。

(1)総資本営業利益率(ROA)
(2)総資本経常利益率
(3)自己資本利益率(ROE)


(1)総資本営業利益率(ROA)

総資本営業利益率=営業利益÷総資本×100

 
総資本営業利益率は、会社が「他人資本と自己資本」(「貸借対照表」で財務バランスをつかもうの「B/Sの右側」を参照)で調達した資金全体を運用して、本業の営業活動でいくら利益を稼いだかという資金の運用の効率性を示します。

総資本営業利益率は、会社の経営の実力を示す一番大切な指標で、一般的にはROA (Return on Assets)と言われています。

(注)なお、「ROA」をインターネットで検索すると、割算の分子を「営業利益」ではなく「当期純利益」や「経常利益」としている場合があります。実は厳密なROAは「EBIT」という支払利息と税金を引く前の事業利益を使うのが正式で、これを簡易的に見るために「当期純利益」「経常利益」「営業利益」のいずれかを使うのですが、どの利益を使うかは目的によって違ってくるのです。中堅中小企業の経営判断に使う場合は、本業の力が分かる営業利益で見るのが最も適していますので、ここでは営業利益としています。(大企業の例は下記(2)をご参照)

 
ROA は10%以上であれば優良企業です。
ちなみに現在のような超低金利時代がいつまでも続くことは資本主義経済では考えられません。
いずれ金利が正常な水準に戻ることを考えると、ROA は最低でも5%程度は確保すべきでしょう。

この指標を分析する上での問題点を指摘しておきます。

それは、分母の総資本(貸借対照表の左側の合計=総資産)には本業の経営に必要な資産(この資本を経営資本と言います)以外の遊休資産が含まれているケースが中小企業では結構多いということです。

総資本営業利益率が低水準にある場合は、遊休資産がどのくらい存在するのか、これらを処分(資産の圧縮)すれと利益率がどれくらい改善されるか、という点も検討しておくことです。

※ROAについては「ROA(総資本営業利益率)に着目!」でも解説しています。

(2)総資本経常利益率

総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100

 
総資本経常利益率は、先ほどの総資本営業利益率の分子が「営業利益」(本業で稼いだ利益)であったのに対して、分子が本業以外の金融取引、投資活動で発生した支払利息、受取利息、受取配当金といった営業外損益も含めた「経常利益」となります。

日本を代表する大会社であるトヨタ自動車は、トヨタ銀行と言われているように豊富な自己資金を運用することで本業に匹敵する利益を営業外収益として稼いでいます。
財務内容の良い一流の会社はいずれもトヨタと同じような経営状況です。

総資本経常利益率は、株式を公開しているような大会社の収益力を総合的に表す指標であると言えます。

(3)自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率=当期純利益÷自己資本×100

 
自己資本利益率は、自己資本(株主の出資金と会社の内部留保利益)と、会社のすべての事業活動の最終的に会社に残った税引後の当期純利益の比率で、一般的にはROE (Return on Equity)と言われています。

自己資本利益率は、株主の立場から見た会社の収益力を判断する指標と言えます

ROE は株式を公開している大企業にはきわめて重要な指標ですが、自己資本の比率も低く、ほとんどの株式を同族株主が保有している中小企業ではあまり重要視されません。

アメリカでは会社は株主のものという考えがきわめて強く、ROE の高い会社が一流会社として一番評価されます。
そのため資金に余裕のある一流企業ではROE を高くするために株式市場から自己株式を買入れ、自己株式の償却を行い、分母を小さくしたりします。

アメリカの上場企業のROEは10%以上です。
日本の場合は、業種でバラツキはありますが、上場企業で平均5%といった所です。

また最近は日本でも自己株式の買入れ償却をする会社が大変多くなっています。
筆者が社外監査役となっている東証一部上場会社でも今期100億円の自社株式買入れを実施しました。

大企業ではROE を高くすることによって高株価を維持し、必要な時にはいつでも市場から資本を調達できる状況を創り出そうとしているのです。

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筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
丸山弘昭の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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