キャッシュフロー増大策を考える(その1)

会計

キャッシュフローを増やすために会社は何をすべきかを考えてみましょう。

営業活動によるキャッシュフローで何をすべきか?

キャッシュフローを増やすには、まず「営業キャッシュフロー」を増やす工夫をしなければなりません。
(用語の意味は「キャッシュフロー計算書の見方」を参照してください。)

本業の営業活動でキャッシュを増やすにはまず、利益を増やす努力をすることです。
よりたくさんの利益を獲得するためには次の二つの方法しかありません。

第一は、
利益の源泉である「売上」と「付加価値(限界利益)」を増やす努力をすることです。
お客様に「値打ちがある、おたくの商品、サービスをぜひ購入したい」と支持される価値を提供する努力を続けることが売上と付加価値の向上につながります。

第二は、
損益分岐点を切り下げることによって利益を生み出す努力をすることです。
ローコスト経営を実現するためにはコストダウンに取り組み、時として人件費など辛いことに踏み込む必要もあります。
また、生産性の向上と顧客への価値提供に貢献しない仕事をこれまでの習慣で行っていることも多く、こうした無駄の排除を行うことも必要です。

会社経営の中で利益がどのようにして生み出されるのかは、「管理会計による「変動損益計算書」とは?」、「損益分岐点分析で利益の稼ぎ方を検討する」で詳しく説明していますので、こちらも参照してください。

投資活動によるキャッシュフローで何をすべきか?

次に考えなければならないことは、投資活動に支出される「投資キャッシュフロー」を必要最低限に抑える工夫をすることです。

「投資キャッシュフロー」を必要最低限に抑えるためには、製造設備、備品、車両などの資産は将来のキャッシュフローを獲得するための元手であるということを常に意識しなければなりません。

キャッシュを生まない無駄な投資はしないこと、投資をする場合は多少性能が劣っていても中古品で我慢する、あるいはメンテナンスをこまめに行いなるべく長い期間利用すること、などが有効です。

「投資する時には過剰設備投資であってもいずれ売上が伸びてくればキャッシュを生み出すから」といった安易な投資は危険です。
理想を言えば、投資は営業キャッシュフローの範囲内に抑え込むことです。

単年度では無理としても、三年から五年の期間の累積で計算した場合に、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたキャッシュフロー(フリーキャッシュフローと言います)を必ずプラスに保つことです。

あるいは財務の健全性を考えれば営業キャッシュフローを何年間か貯金して資金を蓄えておいてから投資することです。

財務活動によるキャッシュフローで何をすべきか?

さらに「財務活動によるキャッシュフロー」は、上場会社であれば株式を発行して資金調達することができますが、間接金融から直接金融へ資金調達の流れが変化しているとはいえ、中小企業では一般的にこの方法での資金調達はまだまだ困難です。

したがって、銀行から借金をして設備投資を行い、10年から15年といった長期にわたって投資した資金を回収しなければならない場合は、綿密な投資計画を立て無理のない借入金の返済計画を銀行に了承してもらうことです。

具体的には、毎年の返済額を「減価償却費プラス税引後利益」の範囲内に抑えます。
なお、現在のような経済環境を考えると、15年経っても借入金の返済ができないような投資は計画そのものを見直すべきです。

・・・・・・・
以上の説明でわかるように、長期的に考えると中小企業がキャッシュを増やすためには結局のところ本業の営業活動でキャッシュを増やす以外、方法はありません。
本業の中からキャッシュを生み出すことができない会社は長期的に存続することができないのです。
キャッシュフロー増大策を考える(その2)」につづきます。

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筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
丸山弘昭の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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