「効率性(その1)~総資本回転率(回転期間)・売上債権回転率(回転期間)」からのつづきです。
(3)棚卸資産回転率・棚卸資産回転期間
棚卸資産回転期間(日数)=棚卸資産÷(売上高÷365)
棚卸資産は一般に在庫と言われますが、商品、製品、仕掛品、貯蔵品が含まれています。
棚卸資産回転率は、「なるべく少ない在庫で効率良く売上を達成しているか」を示す指標です。
無駄な在庫がないかどうか、在庫の滞留がないかどうかをチェックするには、回転率で考えるよりも回転期間(日数)で考えた方がわかりやすいと思います。
在庫の回転日数は、売上を上げるために何日分の在庫を持っているのかを表しています。
したがって、棚卸資産回転期間は当然短いほど良いわけで、回転日数が長くなる場合は要注意です。
在庫は滞留すると資金繰りを悪くするだけでなく、陳腐化、劣化、損傷などにより価値がなくなることもおおいに考えられます。
「在庫はキャッシュ」であると一般に言われています。
しかし、キャッシュなら陳腐化しませんが、在庫は陳腐化する危険性があります。
必要以上の在庫を持たないよう十分注意することが必要です。
対策としては、コンピュータで在庫の受払い管理を行い、必要な数量以上の商品発注は行わない、在庫のABC管理を行い重要度の低い商品は思い切って削減する、毎月末実地棚卸を行い、長期滞留在庫をチェックする、あるいは必要な時に必要な量だけ部品や原材料を仕入れるトヨタ流「かんばんシステム」を導入するといった方法が考えられます。
※ABC管理とは、在庫の各品目を重要性に応じて3つのクラス(A、B、C)に分類し、クラスごとに管理方法を変えることで適切な在庫管理を行うことです。
(4)仕入債務回転率・仕入債務回転期間
仕入債務回転期間(日数)=仕入債務÷(売上高÷365)
仕入債務には支払手形と買掛金が含まれます。
仕入債務回転率と仕入債務回転期間は、会社が「仕入れ債務をどの程度効率的に支払っているのか」を表す指標です。
“効率的”という言葉をつかいましたが、今までの(1)~(3)では効率的であることは良いことでしたが、この指標の見方は異なります。
仕入債務回転期間は支払債務の回転日数を示しており、売上の何日分に相当する信用供与を仕入先から受けているかを示すものです。
つまり、仕入債務回転期間が長いほど支払いまでに日数をかけていることになり、仕入先から信用供与を受けていることになります。
日数が長いことは良いことなのです。
ただし、仕入先から支払日数が長い理由で仕入単価が高く設定されたり、資金不足のために支払いを遅延させていることも考えられますので、そうした実態がないか注意する必要はあります。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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