コロナが与えた税務調査への影響とは
コロナ禍の影響は、税務申告にも大きな影響を与えました。
コロナ禍の影響を受けた場合の申告期限の延長や納税の特例猶予等が挙げられますが、税務調査についても影響がありました。
例年、3月以降の税務調査は3月15日個人確定申告の終了後、順次行われてきました。
しかし今年は、個人確定申告の期限が4月16日まで延長されたため、4月以降に予定していた税務調査はすべて延期となりました。
また、2月より引き続き行われていた調査は、納税者の個々の事情に配慮され、早期に終了するケースがほとんどでした。
その後、4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発令(16日には全国に範囲を拡大)されると、延期されていた調査が着手されることはなく、5月25日に全国で緊急事態宣言が解除された後も、現在(6月30日)にいたるまで弊社の顧問先では1件も着手されていません(※)。
※7月に入り、当局より延期されていた調査について、再開する旨の連絡を受けました。決算時期が近付いている会社については、新たに申告した後に行うという方針のようです。
7月は国税当局では人事異動があり、各税務署等では新たな人員による調査体制が組織されます。
国税当局は、今後の調査について納税者の状況を配慮し行っていくとするも、従来通りの対面調査(感染防止策をとったうえで)を行うとしています(「税務通信」3607号)。
税務調査をうける納税者側の環境とは
ただ、今後は調査の依頼があっても、納税者側の環境により対応が十分にできない場合が想定されます。
業績が大きく落ち込み、調査対応どころではない会社は別として、調査対応の社内インフラが整っていないケースです。
例えば、税務調査は会議室や応接室を使って行われますが、会議室等は密閉空間となりやすい場所です。
税務調査を会議室等で行うには、以下のリスクが考えられます。
- 喚気のため窓や扉を開けたままで行うことも考えられるが、会社にとって機密事項や一部の社員しか知らない事項も調査官に説明しなくてはいけないことを考えると難しい
- 3密の場所に経理担当者が長時間いることが会社のリスク管理からすると躊躇する
- 定期的な喚気、アクリル板の仕切り等の活用も考えられるが、それでも万全ではない
- 社員がテレワークの場合、対応が十分に行える環境にない
なお感染者が出ていない地域も、基本的な考え方は同じです。
上記を考えると、国税当局がいままでのような調査ができるようになるまではしばらく時間がかかり、年内は件数を減らして慎重に行われると思われます。
仮に調査が実施される場合は、短時間で効率よく調査を行うようになるでしょう。
したがって、会社側としては、必要と思われる資料を事前に確認し、要領よく提示できるよう準備することが望まれます。
また、資料自体を税務署側に渡し、署内で検討してもらうことも視野にいれ、論点があれば早めに議論し、結論を導き出すようにすることが、税務署側、会社側の双方にとって有用と考えます。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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