過大支払利子税制の見直し~BEPSプロジェクトへの調整~ | アタックス税理士法人 国際部

過大支払利子税制の見直し~BEPSプロジェクトへの調整~

2020年5月1日

わが国における、関連者への利子の支払を通じた租税回避を防止する措置としては、移転価格税制(適正利率への制限)や過少資本税制(資本規模に比較して過大な負債の利子の損金算入を制限)と併せて、過大支払利子税制(所得金額に対し過大な支払利子の損金算入を制限)が挙げられますが、今回は、令和元年度税制改正が行われたこの過大支払利子税制の内容について整理します。

BEPSは「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字による略語で、「税源浸食と利益移転」と言われています。

経済協力開発機構(OECD)が、グローバル企業の行き過ぎた節税を防ぐためにG20(財務大臣・中央銀行総裁会議)の要請によりBEPS勧告として、15項目の行動計画が取りまとめられました。

行動計画の4 「利子控除制限ルール」の勧告と我が国の税制の間において、対象とする利子や調整所得の定義及び損金算入限度額の基準値(割合)等について乖離(かいり)があったことから、勧告を踏まえた見直しが令和元年度税制改正において行われました。この改正は、法人の令和2年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

【改正のポイント】

従前は、国外の非関連者からの借入金に対する支払利息は対象外でしたが、今回の改正で国外の非関連者に対する支払利息も対象となるところです。

外資系等の国際企業グループが資金調達を行う際に、比較的税率の高い日本で借入金と支払利息を認識することでグループ全体の税負担を下げることが問題視されていました。

【まとめ】

① 制限される支払利息に、国外の非関連者に対する支払利息を追加(一部除く)

② 調整所得金額から、受取配当等(国内・国外)の益金不算入額を除外

③ 対象の支払利息の金額のうち損金に認められる金額が、調整所得金額×20%

④ 適用免除基準の改正

  1. 対象の純支払利子が2,000万円以下(現行1,000万円)であること
  2. 国内50%超グループの対象の純支払利子の合計額が、その国内50%超グループの調整所得金額の合計額の20%以下であること(改正前は国外関連者の支払利子等の額が総支払利子等の額の50%以下)

【内容】

1. 対象利子および対象外とされる利子

BEPS勧告においては、国内外及び関連者/非関連者を問わず全ての支払利子等が対象とされています。

改正前においては「国外関連者」への支払利子等が対象となる純支払利子等とされていましたが、今回の見直しにおいては、対象の範囲が「第三者に対するものを含む」支払利子まで拡充された一方、通常の経済活動(国内銀行からの借入等)を考慮し、利子の受領者において当該利子が 日本の課税所得に含まれている場合については、制度の対象外とされました。

2. 調整所得

BEPS勧告においては、免税所得について調整計算は行わないとされていました。

見直しによって、当期の所得金額に加算する金額から受取配当等の益金不算入額及び外国子会社配当等の益金不算入額が除外されることになりました。

3. 損金算入限度額の基準値(割合)

BEPS勧告における基準固定比率のベスト・プラクティスは10%~30%となっています。

見直しにより、改正前の50%から20%に大幅に割合が引き下げられました。

4. 適用免除基準

新たに、国内グループ企業(持株割合50%超)の全体合算計算による適用免除基準が設けられます。グループ企業の合算純支払利子等の額が合算調整所得の20%以下である場合には制度の適用が免除されます。

また、過大支払利子税制で適用免除基準で免除された場合でも、過少資本税制で支払利息の損金算入を制限されることもありますので注意が必要です。

5. 超過利子額の損金算入

超過利子額が7年間繰越可能である点は、変更がありません。

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