新型コロナウイルス感染症による日本における国際税務上の注意点~一時帰国者に課税される?~ | アタックス税理士法人 国際部

新型コロナウイルス感染症による日本における国際税務上の注意点~一時帰国者に課税される?~

2020年7月16日

6月19日に東京を含む主要都市において緊急事態宣言が解除されました。その中で、経済産業省や地方公共団体等から様々な支援対策が出されています。

しかし、国際税務に関連する特別な措置や時限立法などの手当ては現状発表されていません。

特に、海外進出されている事業者においては、日本の個人所得税の取り扱いについて、以下の点に注意して下さい。

1.日本の非居住者が日本への一時帰国により業務を行う場合の給与所得に対する所得税の課税関係

海外子会社等へ 1 年以上の勤務予定で出向する従業員については、日本の所得税法上は、出国の日の翌日より日本の非居住者に該当します。 そして、日本の非居住者については原則、日本国内源泉所得のみが課税されます。

日本の非居住者が海外子会社で支給される給与所得については、勤務地において発生する所得と考えられ、日本国外源泉所得となるため日本では課税されません。

また、当該出向者に対し日本法人が給与を支給する場合(較差補填や留守宅手当)も、海外出向者が現地で勤務していることを起因として支給されることから課税されません。(格差補填としての役員報酬については、別段の規定があり、日本の非居住者に対し支給 される場合でも国内源泉所得として 20.42%の源泉税が課税されます)

ただし、日本の非居住者が日本への一時帰国により業務を行う場合、日本国内での勤務により得た給与所得については原則、日本国内源泉所得となります。

日本での滞在期間が 1 日であっても、出張期間に対応する所得については、日本国内源泉所得として所得税の課税対象となり課税関係が発生しますので、日本出張期間に対応する格差補填や留守宅手当については20.42%の源泉徴収が行われ、海外子会社で支給される給与所得については確定申告をして納税する必要があります。

しかし、上記により課税対象となる非居住者全てに課税を行うことは現実的ではなく、また、事業上の人の往来の妨げになることも想定されることから、出向先国との間で租税条約が結ばれている場合において、一定期間の滞在であれば「短期滞在者免税」と呼ばれる制度により、滞在国における所得税の納税義務の免除が規定されています。

一般的には現地での滞在が 183 日(半年)を超えない場合に現地免税となることから「183日ルール」とも呼ばれています。 今回の例に当てはめると、

①当該課税年度において開始または終了するいずれの 12 カ月の期間においても他方(日本)の国に滞在する期間が合計 183 日を超えないこと

②報酬が他方(日本)の国の居住者でない雇用者またはこれに代わる者から支払われるものであること

③報酬が他方(日本)の国に存在する雇用者の恒久的施設によって負担されるものでないこと

租税条約がある場合には、出張期間に対応する海外子会社で支給される給与については課税されません。

2. 海外出向者等、日本の非居住者の日本での長期滞在における取り扱い

海外子会社での給与所得については、日本での所得税の納税義務を負いませんが、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外の関係会社へ出向している方や、 海外の企業で現地採用されている方が日本に長期帰国されている方が多くおられると思います。

これらの方については、日本での長期滞在により日本の居住者に該当することとなる可能性もあります。

引き続き日本の非居住者として考えていた場合であっても、日本での滞在期間が 183 日以上となる場合には、上記の「短期滞在者免税」の要件を充足することが出来なくなり、日本の所得税の課税対象となると考えられます。

上記により、新型コロナ感染症により日本での長期滞在を余儀なくされている日本の非居住者の方については、今後海外への帰国を予定しながらも、1 年以上に日本に滞在することとなった場合には、日本の居住者と取り扱われ日本での所得税の納税義務が発生すると考えられることや、日本の住民税の課税対象となる可能性もあります。

担当者として、現状の把握及び今後の対応方針につき、クライアントと事前に検討を行うことがより重要になってきます。

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