シンガポールの福利厚生事情 ~有給休暇と福利厚生旅行~ | アタックス税理士法人 国際部

シンガポールの福利厚生事情 ~有給休暇と福利厚生旅行~

2020年7月17日

日本でも緊急事態宣言が明け、経済活動、ヒトの動きが元に戻りつつあります。

シンガポールにおいてもセミロックダウンとなるCircuit Breakerが解除され、制約はあるものの飲食店の営業など徐々に経済活動が再開をしてきています。しかし、元の状態に戻るまでは相当の時間を要しそうです。

日本との行き来についても6月19日から可能となり、事前の申請による入国許可、14日間の自宅等待機 (※1)、自費でのPCR検査(約200SGD)が義務付けられるものの、二国間の動きができる状況になりました。

※1.日本での感染者数が増加していることから、日本からの入国規制が強化され、現在は政府指定の施設に14日間の滞在が義務化されています。自宅待機は認められていません。

国境を越えた動きが始まりつつありますので、今回はシンガポールにおける社員旅行等の福利厚生事情をご紹介します。

1.有給休暇

休暇の種類が複数に分かれていまして、一般の有給休暇に加え、医療休暇、忌引き等の特別休暇があります。
医療休暇については日本にはない制度ですが、通院や体調不良により休暇を取る場合に取得することができます。
医療休暇というだけあって、休暇を取得する際は、通院や治療したことを示す病院等の領収書の提出が必要です。

勤続年数に応じて有給休暇の日数が加算されるのは日本と同じですが、休日出勤に伴う振替休暇(代休)はありません。
日数は有給14日+医療休暇14日が標準的な水準です。
出向元では過去の休日出勤分の振替休暇が残っており、出向スタート当時、有給残60日以上と話した際に、現地社員から羨望の眼差し浴びたことがありました。

2.福利厚生旅行

しばらくは、社員全員で海外に福利厚生旅行へ出かけることも難しそうですが、日本における福利厚生旅行に関する税務の取扱いはご存じでしょうか。
福利厚生の一環として海外旅行を行う場合、

 ・外国での滞在日数が4泊5日以内であること(国内旅行の場合、4泊5日)
 ・参加者が全体の人数の50%以上であること

この要件を満たす場合は、その旅行の費用を会社が負担したとしても、参加者に対し給与課税をする必要はありません。
ただし、内容や金額からして単純に2つの要件を満たせばよいというものではない点、ご留意ください。

シンガポールでは、給与課税されない福利厚生旅行はシンガポール国内旅行に限られています。
国境を越えて、例えば、社員でバリへ旅行する、プーケットへ旅行するといった場合は、会社が負担する旅費相当額が参加者の給与として課税を受けます。 

給与課税の有無を選定基準とすると、国内旅行に限られてしまい、小さい国ですので、日帰り旅行を中心とした小規模な旅行になります。そのため、社員に希望を聞くと、給与課税を受けても海外旅行をしたいという声が多く聞かれます。

海外への福利厚生旅行が給与課税される背景として、社員の懇親や結束を深めたり、日々の業務に対する慰労を目的とする旅行は、海外へ行く必要はないという考え方があるようです。国が変われば、税制や考え方が大きく異なり非常に興味深いですね。

課税の方法としては、以前のコラムでお話したように、給与にかかる源泉徴収制度がないため、確定申告にて会社が負担した旅費相当額を現物給与として所得に加えたうえで税金計算を行います。

また、安全に国境を越えたビジネス旅行、福利厚生旅行ができるようになることを願うばかりです。

次回のコラムでは、7月10日に行われた総選挙の結果を受けての各種情報をお届けする予定です。
今後も様々な情報をご提供していきますので、ご期待ください。

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