米国の遺産税がかかる?~日本の相続税との違い~ | アタックス税理士法人 国際部

米国の遺産税がかかる?~日本の相続税との違い~

2020年7月31日

日本の居住者がハワイやカリフォルニア、ニューヨーク等に不動産投資をすることも珍しい時代ではなくなりました。

日本の居住者が米国に不動産や多額の預金や株式等を保有したまま亡くなった場合、米国の連邦遺産税と州の遺産税が課せられる可能性があります。

米国では、米国居住者以外に対する米国連邦遺産税の基礎控除額は現在6万ドル(約640万円)です。

従って、6万ドルを超える財産(不動産、預金、株式などの合計額)を米国内に有する場合、原則的には、米国遺産税の支払義務を負うことになります。

ちょっとした不動産であれば6万ドルなんてすぐに超えてしまいそうですが、実際に、米国で遺産税を納税対応したという人はあまり聞き及びません。

実は、日本と米国の間においては日米相続税条約が締結されており、日本の居住者については米国居住者が死亡した場合と同様の取り扱いを受けることができます。

2019年現在、米国国籍者及び米国居住者の基礎控除額は1,140万ドル(約12億円)で、日本の居住者も連邦遺産税について1,140万ドルの基礎控除額が適用されることになります。

ちょっと日本の相続税とはケタが違いますよね。(日本の相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で最低で3,600万円)

ただし、1,140万ドルに、全世界にある相続財産の割合に対する米国にある相続財産の割合を乗じた額が、米国にある財産の評価額から控除されます(日米相続税条約4条)。

この基礎控除額を超える財産について税金がかかるわけですが、適用される税率も違います。

日本の相続税率は10%~55%の累進課税ですが、米国の遺産税では税率が18%~40%の累進課税となっています。

また、連邦遺産税の1,140万ドルの基礎控除は日本の相続税と違って自動的には認められません。

連邦遺産税の基礎控除を受けるためには、被相続人の死亡の時から9か月以内にIRSに連邦遺産税の申告を行う必要があり、その際には、米国にある相続財産だけでなく、全世界にある相続財産も申告しなければなりません。

連邦遺産税と同様に州の遺産税についても申告が必要となります。

ただし、州の遺産税については州ごとに基礎控除額が定められていますので、その金額を超える相続財産がその州にある場合に限り課税されます。

現在、州で遺産税があるのは、

ハワイ、イリノイ、メイン、マサチューセッツ、メリーランド、ミネソタ、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、バーモント、ワシントン、アイオワ、ケンタッキー、 ネブラスカ、ペンシルバニア、メリーランド、ニュージャージーです。

州の基礎控除は連邦遺産税の1,140万ドルと同額の場合もありますが、

多くの場合は、この金額よりも低い金額に設定されています。

従って、各州の基礎控除額について別途確認することが必要となります。

また、州の遺産税に関しては、預貯金、株式、出資持分などは州に所在する財産とみなされず、州の遺産税の対象とならないこともありますので注意が必要です。

最後に、日本の居住者が亡くなった場合、日本にある相続財産だけでなく、米国にある相続財産についても日本の相続税が課税されるため、米国で連邦遺産税等を納税した場合には、米国にある財産について日本と米国で二重課税が発生します。

この二重課税の回避については、日本の相続税法20条の2に規定があり、米国で納付した遺産税等について、日本で納付する相続税額から控除することができます。

今回、米国の遺産税と日本の相続税の違いについて述べましたが、米国にある相続対象財産については、上記のように申告の手間暇がかかり、大きな負担と言えます。

ですので、できる限り米国にある不動産や預金、株式等の財産を法人所有の形にしておくなど、事前のエステイトプランニングをお勧めします。

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