2016年10月に公表した「国際戦略トータルプラン」にも掲げられている通り、調査マンパワーの充実への対応により、ここ数年の法人税等の調査事績の概要(毎年11月頃公表)では、近年海外取引法人等や海外取引に係る源泉徴収に対する 実地調査による非違件数・申告漏れ所得金額ともに増加傾向にあります。
また、海外取引法人税等のうち、外国子会社合算税制や移転価格税制の実地調査件数も増加しています。
企業では、経済の国際化が進行し、海外に製造・販売拠点を有する日本企業や、海外からの企業進出および投資も増加するなど、国外関連者との取引が増加するとともに、経済のデジタル化も急速に進展し、国際取引に係る課税上の問題の拡大と複雑化が同時に進行しています。こうした状況に国税局調査部も的確に対処し、国税組織が将来にわたって引き続き適正・公平な課税を実現していくためにも、効率的な税務執行体制性が必要とされてきました。
このような背景から国税局は、2020年事務年度から国際調査管理課において、国際課税面の法人管理を一元化し、各種資料情報(CbCR、CRSなど)のほか、申告状況や過去の調査結果などに基づきリスク分析を行い、移転価格などの特定分野を切り分けることなく国際課税全体の観点から法人管理を行う事としました。
その上で、国際税務に係る調査は、国際税務調査課において、移転価格税制に係る項目や外国子会社合算税制に係る項目などを総合的に調査する形式や、一般の調査部門等が行う調査を国際調査課が国際課税に関して支援する形式など、事案に応じた調査体制により実施する事になります。今までは限定的だった移転価格などの幅広い知識を持った調査官が、一般の法人調査に加わる事で、海外取引の問題点の検証が今まで以上に詳細に検証されることになる事になり、納税者にとっては、今まで以上の調査対応への備えが必要になると考えられます。
なお、今回の国税局の組織改編は、国税局調査部において国際課税の専門部署が置かれている東京局・大阪局・名古屋局・関東信越局を対象とされており、この他の国税局では今後の取組課題となっていく事が予測されます。
具体的には、各国税局の国際調査課(移転価格以外の海外取引調査)、国際情報課(移転価格調査・事前確認審査)に分かれていた組織を横断的に再編し、国際調査管理課(運営企画・法人管理事業サポート)、国際調査課(海外取引調査・移転価格調査を含む調査支援)、事前確認審査課(事前確認審査)に改編しました(国税局によって、改編後の組織に違いがあります)。