日本では、新型コロナウイルス感染症(以下、「コロナ」)の感染者数が依然として増えています。
シンガポールでは、セミロックダウンとなるCircuit Breakerが解除され、様々な制約の中、経済活動が行われていますが、感染者数は徐々に落ち着いてきております。
8月にはシンガポールとマレーシア間の往来ができるようになります。コロナの影響により往来が封鎖される以前は、毎日30万人の労働者がバイクなどで国境を越えていたと言われています。
また、日本との往来についても、ビジネス目的の渡航に限定して、コロナ陰性の証明書と行動計画の提出があれば14日間の指定施設内滞在をすることなく往来ができるよう政府間で最終調整がなされています。コロナとうまく付き合いながらの経済活動の再開が今後広まっていくことと思われます。経済活動、労働力の動きが元の状態に戻るのは良いことですが、再び感染者数が増えないことを願うばかりです。
コロナの影響で大きなダメージを受けた経済ですが、シンガポールも他国と同様で大きな影響を受けています。
GDP成長率は年率換算で前期比マイナス41.2%という速報値が発表され、建国以来、最低のGDP成長率となる見込みです。
さて、今回は7月10日に実施された総選挙の結果を踏まえまして、労働ビザ発行への影響を中心にお伝えをします。
1.選挙結果
得票率は落としたものの与党が勝利した結果となりました。
しかし、得票率が約9%下落したことを考えると、建国以来続いている政権体制に対し、若者を中心とした国民の不満が顕在化してきているとみることができます。
このような結果になると、与党も国民の不満要素を払拭すべく政権のかじ取りをせざるを得なくなります。
国民が抱える不満の代表格は、外国からの移住者及び労働者の増加です。外国人が高い給与を得て、高い水準の暮らしをし、都心部に住居を構えているという不満を多くの国民が抱えています。
以前のコラムでも労働ビザを取り上げましたが、今後は選挙結果を受けて、労働ビザの新規発行はより一層の厳しさを増しそうです。
2.労働ビザについて(総選挙後の影響)
シンガポールでは、労働ビザの発行数は新規、更新を含め、国により厳格に管理されています。 経済や今回のような選挙結果を受けた政策により、労働ビザの発行状況は常に変化します。
コロナの影響により、労働ビザの新規発行が一切凍結され、エッセンシャルワーカーを中心に新規発行は再開されつつありますが、その他の職業については労働ビザの新規発行はコロナ以前と比較し、格段にハードルが上がっています。総選挙の結果も大きな影響を与えていると想定できます。
ハードルが上がったと表現しましたが、いくつか事例をご紹介します。
まずは、申請に必要な書類の種類が増えました。労働ビザを申請している方が、就職する会社でどのポジションにつくか、どのような業務を行うかを組織図等を提出することにより説明を求められるようになりました。
また、最終学歴についても、シンガポール当局が開示するリストに掲載されていない大学の場合、卒業証明書以外に国際機関が発行する卒業証明書が別途必要になります。その発行にも、実費を含め約400ドルほど必要になります。
このように、労働ビザの申請には、書類の準備にも時間を要し、申請後の審査でも今まで以上に時間を要することになり、シンガポールへの移住が非常に難しくなっている状況にあります。
例としてご紹介しました事案も、また来月には状況が変わっているかもしれません。
大きな変更点などがあった場合には、次回以降のコラムで随時お話をさせて頂く予定です。
今後も様々な情報をご提供していきますので、ご期待ください。