シンガポールにおける税務当局の対応~税務対応に関する事前照会制度~ | アタックス税理士法人 国際部

シンガポールにおける税務当局の対応~税務対応に関する事前照会制度~

2020年10月30日

 新型コロナウィルスや総選挙の結果を受けて、しばらくの間、労働ビザをトピックにしてコラムをお伝えしてきました。今回は、趣向を変えまして、シンガポールにおける税務当局の対応についてご紹介をしていきます。今回取り上げるのは「事前照会制度」です。

 日本においても、例えば、グループ会社間で行う組織再編行為に対する税制の取扱いについてなど、事前に国税局に照会をかけ、書面にて回答を得る制度があります。国際税務に関しても、移転価格税制に関する事前確認の申出と事前相談の制度が設けられています。照会を行ってから文書による回答が出るまで時間を要するものの、大規模な 組織再編行為や税制の判定が煩雑である案件には、事前に国税局へ照会を掛けることは有意義であると考えられます。

シンガポールにおいても、同様の事前照会制度が設けられています。日本と異なる点は大きく2点あります。

1.照会方法は基本的にメールによる資料提出で行われること

日本において国税局に照会を掛ける場合、管轄する国税局に事前予約をとり、担当部署を訪問し、概要等を示す資料提出と補足説明を面談形式で行います。シンガポールでは、税務調査も同じですが、基本的な税務当局とのやり取りは電話もしくは電子メールによって行われます。資料の提出も電子メールにファイルを添付する形式で行われます。実際に担当と面談をし、論点のすり合わせや意見交換を直接行うことに慣れていたため、大きな驚きを覚えました。

2.事前照会は有料であること

日本では事前照会につき、照会料や回答にかかる料金として国税局から請求書が発行されることはありません。シンガポールでは、事前照会制度が有料である点は大きなカルチャーショックでした。事務所内での事前照会事例を見てみましたが、組織再編行為にかかる税制の照会を掛けた際、税務当局より「回答にかかる所要時間 35時間 請求額5,775SGD」として請求書が発行されていました。1時間当たりで計算しますと165SGDとなりますので、現在のおおよそのレート(1SGD=77円)で換算すると1時間当たり12,705円となります。有料ではありますが、判定に困るケース、慎重に案件を進めたいケースは、事前照会をかけると安心ですね。

制度は似ていますが、有料での照会制度というのは、お国が変われば文化や制度も異なる典型ですね。今後は、新型コロナウィルスの影響からグループ会社間の組織再編成を検討するケース、また、海外の子会社等を含めた三角合併を検討するケースなど様々なケースが出てくると想定されます。その場合は、税務面からすると、重要度や金額インパクトに応じて、事前照会制度を活用されることもご検討ください。最も重要な点は、実行した後(事後)ではなく、事前に税制にかかる適正は判断を行い、税務コンプライアンスに心がける点です。

また次回は、実際に渡星を試みようと予定していますので、現在の渡航制限にかかる状況やビジネストラックの体験談をお伝えします。

 

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