生前信託(Living Trust)の有効性 | アタックス税理士法人 国際部

生前信託(Living Trust)の有効性

2020年11月27日

海外に不動産や金融資産をお持ちの場合で、その方が亡くなった場合に、その財産が所在する国や地域での相続手続として「プロベイト」という裁判所での検認手続が必要なことは以前のコラムでもご紹介しました。

このプロベイトについては、裁判所へ様々な書類を提出しなければならないことやその書類作成について現地の弁護士や会計士など専門家に支援してもらわなければならないため、また期間も数年に及ぶため、多額の費用負担がかかることもご説明しました。

そうした煩わしさを回避するための手法もいくつかご紹介しましたが、今回は特に、生前信託(Living Trust)の有効性についてご説明したいと思います。

手続の容易性やコスト負担を考えると、共同口座(Joint Account)や共有名義化(Joint Tenancy)などの方法があります。

しかし、近年、国際間の金融口座情報の自動交換制度等(CRS)によって、税務当局による海外銀行口座の調査が盛んに行われており、共同口座や共有名義ということだけで、共有名義人への資産や所得の移転が行われているのではないかという指摘を受けるケースがたびたび発生しています。

プロベイトという手続を回避したいがための共同口座や共有名義化ではあるのですが、不必要に税務当局に海外の資産を根掘り葉掘り問われるのは気持ちの良いものではありません。

そうしたデメリットを回避するための手段として生前信託(Living Trust)があります。

生前信託(Living Trust)は、財産を信託する「委託者」、信託された財産を管理・運用する「受託者」と、信託された財産から生じる利益を受け取る「受益者」の3者で構成されます。

そこで自分の財産を信託財産として信託受託者名義に変更しておき、自分の死後に当該財産を譲り受ける人(受益者)を決めておくという方法です。

これにより自分が死亡した場合、プロベイトを経ることなく財産が自動的に受益者に引き継がれます。信託した財産は、当初は自益信託(自分を受益者)としておけば、税務当局から不必要な指摘を受けることもありません。

それ以外にも海外資産が様々な国にまたがって分散・保有している場合、現地の法制等を意識したエステートプランニングが必要になります。生前信託(Living Trust)の活用として、これらの資産を集約し、受託者へ財産管理を任せることで、個人は煩わしさから解放されます。

また、事業承継の場面でも、生前信託(Living Trust)で自社株式あるいは不動産を信託設定しておき、特定の方を自分の死後の受益者としておくことにより、 予め行先を指定することが可能となります。海外での遺言と同様の機能が働き、円滑な事業承継に資することができます。

海外での資産管理の方法として、一定の手続や信託コストは要しますが、生前信託(Living Trust)の活用について検討されては如何でしょうか。

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