新型コロナウィルス感染症(以下、「コロナ」)の患者数が逓減してきているアジア諸国間で、少しずつビジネス目的を中心とした国境の行き来が始まっています。今年の春以降、ほとんどの国際線が欠航となり移動手段が極めて制限されていましたが、徐々に国際線の往来が再開されてきています。
シンガポールへの直行便も成田、羽田、関西便の本数が増便され、さらに、12月から名古屋、福岡便も再開が 決まり、コロナ対策をしっかり行いながらビジネス渡航再開の兆しが見え始めています。
そのような中、11月下旬にビジネストラックを利用しシンガポールに戻りましたので、渡航に関する 実体験談をお届けします。
◇渡航準備
ビジネストラックと呼ばれていますが、正式には、RGL(Reciprocal Green Lane)という制度名になっています。渡航をビジネス目的に限定し、訪問先や滞在日数を制限することでコロナ対策を行いながら、経済の動きを再開させることを狙っています。
渡航にあたり、いくつか抑えるべきポイントがあります。
①シンガポール当局からの渡航許可
現地法人や訪問先企業が当局に渡航許可を申請し、許可がおりた場合に限り、入国が許されます。渡航の2~5週間前に申請を行いますが、申請にあたり渡航予定日、到着日から14日間の行動予定、滞在先などを提出します。順調にいけば、申請から数日で許可がおりますが、渡航者数を制限する目的で申請が却下される場合もあります。また、渡航許可が出た場合は、1週間ほどの入国許可期間が指定されます。申請者は許可された期間内に入国をしなければなりません。
②PCR検査の陰性証明書(出発前と到着時)
日本出発の72時間前にPCR検査を受け、渡航前に陰性証明書をシンガポール当局へ提出しなければなりません。検査は日本政府が指定する病院等で受ける必要があり、検査方法は鼻腔から検体を採取する方式に限定されます。証明書含め5万円のコストがかかります。検査も混雑しているようですので、出国時間から逆算して、早めに検査予約をすることをお勧めします。
また、到着時、チャンギ国際空港でのPCR検査も事前予約が必要です。今週から検査費用が引き下げられましたが、こちらも2万円ほどのコストとなります。検査方法は、唾液と両方の鼻腔から検体を採取する方法がとられ、片方の鼻腔からのみ検体を採取する日本と比べ、かなり念入りな検査が行われます。
③航空券の手配
11月中の渡航の場合、羽田、成田、関西空港からの直行便利用に限って渡航が許可されていました。12月以降は名古屋、福岡便も再開されるため、渡航対象になると想定されますが、常に最新の情報を確認してください。
④到着前3日前の健康報告
発熱していないか、病院に行っていないかなどのチェック項目があり、パスポート番号や搭乗便名などと併せて事前報告が必要です。通院履歴はPCR検査目的の通院は除かれるようで、万が一、通院履歴にチェックを入れると、入国審査時にかなり詳細なヒアリングが行われます。
⑤空港からホテルまでの送迎手配
入国から14日間はタクシーを含め公共交通機関が利用できません。そのため、ホテルまでの移動手段を手配しなければなりません。実際に出張をする場合は、14日間の訪問先への移動も送迎を手配しなければならず、チャーター便になるためかなりのコストがかかります。私の場合は、毎日出向先へ出勤するため、コスト削減のため、マーライオンをみながら片道30分かけて徒歩で通ってみる予定です。
渡航の準備にあたっては、現地も混乱しているのが実情で、当局も問い合わせ対応に追われているようです。その原因は、日本国内の感染者数が急増したことにより、11月23日の渡航者から政府指定の隔離施設で14日間の滞在が義務付けられるように制度が変更されました。この制度変更はビジネストラック利用者には適用されないのですが、明確なアナウンスがない中での変更であったため、渡航申請に携わる現地スタッフも確認対応に追われたようです。
以上のような準備を行い無事、関西空港発のシンガポール航空に搭乗しました。乗客は10名程で、機内スタッフの数とかわらない乗客数です。チャンギ国際空港も4月以降、4つあるターミナルのうち2つが閉鎖されていて、早朝着であったとはいえ閑散としていて寂しい限りです。
次回のコラムでは、チャンギ国際空港に到着して、入国審査以降の実体験談をご報告します。