コロナウイルスが発生して1年がたった現在でも猛威を振るっており、終息する気配がありません。
その影響をうけている人の中には、海外赴任予定者および日本に一時帰国している海外赴任者がいるのではないでしょうか。
海外赴任を予定していたがコロナウイルスの影響で、現地への赴任できなかったが、日本からリモートワークで海外子会社勤務となっている場合や、海外赴任をしていた従業員が、コロナウイルスにより日本に一時帰国の予定で帰国したが、再出国できずに日本からリモートワークで海外子会社等に勤務している場合があるかと思います。
今回はこのような場合の課税関係を説明します。
海外勤務の予定だったが、現地に赴任せず日本からリモートワークをしている場合
(1)給料が日本の親会社経由で支払われる場合(国内払い)
リモートで海外子会社勤務を行っている従業員は、海外リモート勤務を行う前(赴任前)と変わらず、日本に住んでいる者に対して日本国内で支払われる給与になるため、源泉徴収の対象となります。
従って、不産所得等がなく、勤務先が1箇所で給与が年間2,000万円を超えなければ、年末調整で納税手続が完結します。
(2)海外子会社から給料が支払われる場合(国外払い)
この場合は、日本に住んでいる者に対して支払われる給与であるが、日本国内で支払われる給与でないため、源泉徴収義務は生じません。
しかし、日本国内での勤務にかかる給与であり、日本国内での課税対象となります。
従って、従業員は、日本親会社や海外子会社等から支払われた給与について確定申告をする必要があります。
海外赴任していた従業員が、一時帰国の予定で帰国したが、再出国せずに日本国内から海外子会社等にリモートワークしている場合
税務上は、1年以上の予定で海外赴任した従業員が、日本に一時帰国している場合、一時帰国によってもまだ海外子会社等の勤務の命解かれていない状態であれば、一時帰国の期間が1年以上となるまでは、基本的にその従業員は「非居住者(日本に住所がない人)」になります。
従業員が国内にいれば,リモートワークで海外子会社等に勤務をしていても,国内において行う勤務となり,その給与は日本での課税対象となります。
合わせて、日本国内の親会社が支払った給与、海外子会社が支払った給与のいずれも、日本国内での給与となり源泉徴収の対象となります。
ただし、海外子会社が給与を支払うケースにおいては、日本国内に海外子会社の事務所等があるか、海外子会社の所在地国と租税条約等で短期滞在者免税規定があるかあるかによって以下の様に取扱いが異なります。
(1)日本国内に海外子会社の事務所等がない場合
日本国内で支払われる給与でないため、海外子会社に源泉徴収義務はありません。
一方支払を受けた従業員は、確定申告が必要となります。別途、親会社から支払われている留守宅手当などがある場合、非居住者であるため、日本親会社による源泉徴収で納税手続は完了します。
(2)日本国内に海外子会社の事務所等がある場合
実務では出会ったことはありません。実際に取り扱う場合は注意が必要ですが、この場合は、海外子会社の支店が日本国内にある場合には、「みなし国内払い」が適用されて海外子会社に源泉徴収義務が生じます。
従業員からみた場合、海外子会社が源泉徴収して、税務署に納付することで納税手続が完了するため確定申告は不要となります。
(3)海外子会社の所在地国との租税条約で短期滞在免税規定がある場合
海外子会社の所在地国が、いわゆる183日ルールのような租税条約を締結している国である場合、上記(1)、(2)のいずれの場合であっても、短期滞在者免税の適用要件を満たせば免税の扱いとなります。
実務上では、このケースは多いと思います。
(税務通信3627号より一部抜粋)