経済産業省から財務省へ提出される税制改正の要望では、「経済のデジタル化に伴う国際的な課税の見直しへの対応」が、あげられていましたが令和3年度の税制改正では制度化には至りませんでした。
国際課税の原則
「PE(事業所)なくして課税なし」との考え方が国際課税の原則とされていますが、近年の企業取引のグローバル化、デジタル化が、この国際課税の原則の是非を問いただしています。
顕在化している問題
具体的には、GAFAなどの世界的大企業では、オンライン広告などでサービス提供がされるため、事業所等(支店や工場など)が無い国においても、所得を上げる事が可能となります。
課税権は、事業所等のある国(以下、居住地国という)が持つので、居住地国で納税が発生します。反面、所得を上げていても事務所等が無い国(以下、市場国という)には課税権がないので、納税はされず、各国の税収に公平感を欠くという問題となっています。
また、税率差を利用した節税スキームとして、親会社で開発途中の無形資産を軽課税国にある子会社へ譲渡した後、無形資産を完成させ、そこから生じる所得を子会社が収受、納税し、グループ全体の税額を抑える事をする企業も多く存在します。
OECDの取り組み
OECDでは、これらに対応するため、居住地国から市場国への一部税源を配分する方法や国際的に「最低税率」未満の海外子会社が稼得した所得を親会社へ合算課税することなどを検討し、2021年半ばまでの合意を目指しています。
各国の状況と今後の展開
一方、すでに独自の課税措置としてオーストラリア、インド、トルコなどデジタルサービス税を導入している国もあります。
課税の範囲や対象取引については、それぞれの国で異なるため、インターネットを通じたサービス提供を行う企業以外においても、課税範囲や二重課税の問題など過度な税負担が考えられ、OECDの最終合意に注意が必要となります。
【語句説明】
GAFA:グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの総称
OECD:経済協力開発機構
Organisation for Economic Co-operation and Development