贈与税の見直し議論~暦年贈与課税の見直しは国際課税への潮流なのか~ | アタックス税理士法人 国際部

贈与税の見直し議論~暦年贈与課税の見直しは国際課税への潮流なのか~

2021年3月19日

コロナ禍は、今現在、依然として終息の気配を見せませんが、時の流れは止まらず、相続対策は待ったなしです。贈与税の申告が進むこの時期に贈与税にまつわるトピックを整理したいと思います。

暦年贈与課税

改めてですが、暦年贈与課税とは、生前贈与の一つの方法で、毎年、110万円までの贈与額であれば贈与税が課されません。

この110万円の枠のことを「基礎控除」といい、この基礎控除を超えて贈与された分について贈与税が課されます。

暦年贈与においてはこの基礎控除を活用して相続対策を行います。

この110万円の基礎控除をうまく利用して、毎年子どもや孫に少しずつ贈与を行えばお分かりのとおり長期的にはかなりの財産を移転できます。

言い換えると相続税を節税することができるわけです。

贈与税は、もともと相続税の補完的な位置づけで、生前にバンバン贈与されてしまうと相続財産が減って相続税が課税できなくなることを防ぐために設けられました。

それでもこの基礎控除などを上手く活用することで、つまり、税率や移転時期を考慮することで相続税率の累進負担等を回避して多額の財産を移転させることができる点が問題とされています。

税制改正大綱に見られる国の方向性

この暦年贈与課税の見直し議論は、実は古くて新しい議論で、ここ数年の税制改正大綱では常に言及されています。

2021年度の税制改正大綱では、大幅な制度改変自体は見送られたのですが、資産移転を公平にすべきという観点から「相続税と贈与税の一体化」として触れられています。

相続税と贈与税の一体化は、資産再配分機能の確保と資産移転の時期の選択について中立的な税制構築を図るというものです。

現行法で日本は相続開始前3年間の贈与を相続税の課税対象としていますが、欧米諸国は日本より長い期間の贈与財産を相続財産に加える形で課税対象としています。

米国は生前贈与の全てが相続税(遺産税)の課税対象であり、英国は死亡日以前7年間、ドイツは10年間、フランスは15年間となっています。

相続財産へ加えられる贈与財産の期間が長ければ資産移転の時期が問題にならない中立的な税制だとして日本も参考にしているようです。

今後、贈与税については資産移転の時期に関係させず、生前贈与と相続を通じた資産の総額にかかる税負担が一定となる仕組みが検討の対象になりそうです。

相続財産に加算されるのは、すべての生前贈与分かそれとも一定の期間分か、相続対策を検討される方は今後の制度改変を注視していく必要があります。

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