タックスヘイブン税制の対象となる海外子会社については、前回までのコラム(その②、その⑤を参照)で説明したとおり、租税負担割合によって判定の要素が異なります。この点をしっかり確認し、判定をしなければいけません。表にすると以下の通りとなります。
■租税負担割合区分による判定要素
租税負担割合 | 会社単位合算の判定要素 |
---|---|
20%以上30%以下 | ペーパーカンパニー等に該当するか |
20%未満 | 経済活動基準を充足するか |
租税負担割合20%以上30%以下の外国関係会社
ペーパーカンパニーの判定においては、実体基準と管理支配基準のいずれも満たさない場合には、会社単位の合算となります。言い換えれば、2つの基準のうち、どちらかを満たせば、合算対象にはなりません。したがって、海外子会社の状況によって、要件を満たしやすいどちらかの基準をクリアする方法を検討する事で、会社単位の合算を回避することができます。
租税負担割合20%未満の外国関係会社
経済活動基準を充足するかの判定は、厳しく以下4つの基準のいずれかを満たさない場合には、会社単位の合算となります。言い換えれば、4つの基準のうち、1つでも満たさなければ、合算対象となるのです。
基 準 | 基 準 の 概 要 |
事業基準 | 主たる事業が株式等の保有でない事 |
実体基準 | 本店所在地国に主たる事業を行う事務所がある事 |
管理支配基準 | 本店所在地国で管理・支配・運営を行っている事 |
非関連者基準 又は 所在地国基準 | 非関連者との取引が50%超である事 本店所在地で主たる事業を行っている事 |
主たる事業の判定は重要
注目すべきは、各基準に含まれる「主たる事業」です。海外子会社で2以上の事業を行っている場合、主たる事業の判定によって、事業基準、実体基準、所在地国基準の判定が変わる場合があります。主たる事業の判定は、それぞれの事業に属する収入金額又は所得金額の状況、使用人の数、固定施設の状況等を総合的に勘案して判定することとしなります(措通66の6-5)。
極端な例ですが、中国で製品を製造し、ベトナムでその製品を小売りしているような会社の場合には、主たる事業が製造業であれば、本店所在地国が中国でなければ基準を満たしません。主たる事業が小売業であれば、本店所在地国はベトナムでなければ基準を満たさないという事になります。
会社として、事業の基軸をどちらに置いているかという事もさることながら、収入や所得金額、使用人の数、固定施設の状況によって、他方の事業が「主たる」と判定されて、思わぬ課税を受けることも考えられます。
まとめ
合算対象の判定の前に、外国関係会社の租税負担割合と主たる事業を客観的に判断し、判定要素となる基準を満たすかどうかを、慎重に判定してタックスヘイブン税制の適用を検討することが必要です。