香港税制の概要 | アタックス税理士法人 国際部

香港税制の概要

2021年4月30日

2020年の香港の外資系企業の数が11年ぶりに前年比でマイナスに転じたようです。特に金融関連企業の落ち込みが目立ちます。

中国やアジア事業の拡大に伴い香港に進出する企業数は右肩上がりだったのですが、香港国家安全維持法が施行され、司法制度への懸念が高まっている影響でしょうか。

それでも、全般的に低税率である香港は、そもそもが税金の種類自体が少なく、事業税や住民税といった地方税や消費税といったものも存在せず、その税制の内容も非常に簡素で明快なことから企業や投資家にとっては魅力のある地域です。

今回は、改めて香港税制の概要についてまとめてみました。

香港税制の概要

香港の税制は、大きくは内国歳入法(INLANDREVENUE ORDINANCE)に基づいた所得に対する税と、個別に定められた法令に基づくその他の租税とに区分されます。

所得に対する税金は、事業所得税(法人税)、給与所得税(個人所得税)、資産所得税の3税目のみで、日本の住民税、事業税のような地方税はありません。また、日本の消費税に相当する付加価値税もありませんし、相続税、贈与税に相当する税金もありません。

事業所得税(法人税)の概要

1.概要

香港で事業を営む者は、香港源泉で課税対象となる各課税年度の事業所得を計算し、税務申告書を所定の期間内に提出する必要があります。

香港税務局は、税務申告書を基礎に納税者の課税所得を査定し、賦課決定通知書を納税者に送付します。納税者はその賦課決定通知書に異議がなければ、その課税年度の確定納付額ならびに翌課税年度の予定納付額を指定された期限内に納付することとなります。

なお、課税対象となる事業所得は、以下の3つの要件を満たすものとされているため、これらの定義に該当しないオフショア所得や事業活動から生じたものではないキャピタルゲインは非課税となります。

①香港内で事業活動を行っている

②香港内で行った事業活動から得られた所得である

③その所得は香港内で生じたものである

2.税率

16.5%(ただし、200万香港ドルまでの課税所得に対しては、8.25%)

3.申告期限

毎年、4月1日付で香港税務局が申告書用紙(BIR51)を発行し、納税者へ送付してきます。原則として、その発行日から1ヵ月以内に申告書を作成し、香港税務局に提出する必要がありますが、会社の決算期に応じて申告期限の延長が認められており、通常は会計事務所が一括して申告期限を延長しています。

給与所得税(個人所得税)の概要

1.概要

香港を源泉とする給与所得がある者は、課税年度(4月1日から翌年3月31日まで)における給与所得を計算の上、税務申告書を作成し所定の期間内に香港税務局へ提出する必要があります。その後、香港税務局の査定の結果送付されてくる賦課決定通知書に異議がなければ、指定された期限内に税金を納付することになります。なお、香港源泉所得である限り、支払場所・支払通貨・給与の費用負担者にかかわらず全額が課税対象となるため、留意が必要です。

2.納税義務者

課税年度は、毎年4月1日から3月31日までの12か月間で、香港を源泉とする雇用、または、取締役などの役職に基づく所得が対象となります。コミッション、賞与、チップ、手当、その他臨時収入、香港で提供されたサービスに対する収入および年金も課税対象に含まれます。
香港滞在が、連続する12カ月のうち183日以内の外国籍保持者は、給与所得税の対象外です(日港租税協定)。

3.税率

給与所得税の税額は、次の①②で計算した金額のいずれか小さい方となります。

①人的控除前の課税所得に標準税率15.0%を乗じた金額

②人的控除後の課税所得に累進税率を乗じた金額

人的控除と累進税率のメリットが取れる分、②の累進税率を適用した方が有利となるケースが大半です。

4.人的控除

給与所得税には人的控除があり、代表的なものは以下のとおりです。

例えば、既婚者で子供が2名いる場合には、264,000香港ドル+120,000×2名=504,000香港ドル(約7,000,000円)までの所得であれば税金が発生しないこととなります。

5.申告期限

香港税務局は、毎年5月上旬に納税者に対して給与所得税申告書(BIR60)を送付してきます。納税者はこれに、給与・賞与・雇用主負担の家賃及び本国支給の給与等を記載し、本人が署名の上で、1か月以内に税務局に提出することになります。

6.納付期限と納付方法

申告書の提出後3~6か月程度で納税通知書が発行され、この納税通知書に納付期限と納付額が記載されているので、これに基づいて支払いを行うこととなります。

香港では予定納税制度がとられており、翌課税年度も当課税年度と同額の課税対象所得があるものとみなして、当課税年度の確定税額と翌課税年度の予定税額を合わせて納付することになります。通常、確定税額及び予定納税額の75%を第1回、3か月後に予定納税額の25%を納付することとなります。

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