『子会社からの配当と子会社株式譲渡損を組み合わせた租税回避に係る規制措置(子会社株式簿価減額特例)』について | アタックス税理士法人 国際部

『子会社からの配当と子会社株式譲渡損を組み合わせた租税回避に係る規制措置(子会社株式簿価減額特例)』について

2021年5月17日

令和2年4月1日以後開始事業年度(令和3年3月期決算)より、『子会社からの配当と子会社株式譲渡損を組み合わせた租税回避に係る規制措置子会社株式簿価減額特例)』の適用がスタートします。

重要なポイントを整理しておきたいと思います。

制度導入の背景

 本特例導入前は、法人が①子会社株式を取得後、②子会社より配当を非課税(受取配当等の益金不算入の適用により全部又は一部が益金不算入となる)で受けるとともに、③配当により時価が下落した子法人株式を譲渡することにより、親法人において子法人株式譲渡損が計上される、という節税スキームが可能でした。

これを防止する目的で、令和2年度税制改正により創設されたのが、「子会社株式簿価減額特例」です。

制度の概要 

 内国法人が他の法人(連結子法人を除く。)から配当等の額を受ける場合(当該配当等の額に係る決議日等において当該内国法人と当該他の法人との間に特定支配関係(※1)がある場合に限る。)において、対象配当等の額及び同一事業年度内配当等の額の合計額がこれらの配当等の額に係る各基準時の直前において当該内国法人が有する当該他の法人の株式等の帳簿価額のうち最も大きいものの10%相当額を超えるときは、当該内国法人が有する当該他の法人の株式等の当該対象配当等の額に係る基準時における移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額は、当該株式等の当該基準時の直前における帳簿価額から当該対象配当等の額に係る益金不算入相当額(※2)を減算した金額を当該株式等の数で除して計算した金額とすることとされました(法令119条の3第7項)。

本特例は、法人が、令和2年4月1日以後に開始する事業年度において受ける配当等の額について適用されます(令和2年改正法令附則5条)。

(※1)「特定支配関係」とは、次に掲げる関係をいいます(法令119の3第9項二)。

・当事者間の支配関係(一の者が法人の発行済株式等の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式若しくは配当等議決権又は出資を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(直接支配関係))

・一の者との間に当事者間の支配関係がある法人相互の関係

(※2)「益金不算入相当額」とは、以下の益金不算入規定により益金不算入とされる金額に相当する金額をいいます。

 ・受取配当等の益金不算入(法法23条第1項)

 ・外国子会社から受ける配当等の益金不算入(法法23の2条第1項)

 ・現物分配による資産の譲渡(法法62の5条第4項)

本特例が適用されない場合(適用免除基準)

 次の①~④のいずれかに該当する場合には、本特例の適用はありません。

①内国株主割合要件

 他の法人(普通法人に限るものとし、外国法人を除く。)の設立の日から特定支配日(※3)までの間において、その発行済株式の総数等の90%以上を内国普通法人等が有する場合(当該期間を通じて当該割合が90%以上であることを証する書類を当該内国法人が保存していない場合を除く。)(法令119条の3第7項1号)

(※3)「特定支配日」とは、他の法人との間に最後に特定支配関係を有することとなった日をいいます。

②特定支配日利益剰余金額要件

対象となる配当等の原資が買収後に発生した利益剰余金であること(法令119条の3第7項2号)。

③10年超支配要件

特定支配日から当該対象配当等の額を受ける日までの期間が10年を超えること(法令119条の3第7項3号)。

④金額要件

対象配当等の額及び同一事業年度内配当等の額の合計額が2,000万円を超えないこと(法令119条の3第7項4号)。


海外子会社等から株式簿価の10%を超える高額な配当等を受ける場合に、意図しない形で本特例の適用対象になってしまう可能性がありますので十分に注意が必要です。

また、子法人が内国普通法人であるケースについては、適用されるケースは限定的であるものの、株式保有割合が90%以上であることを証する書類を親法人が保存していなければならない点にも注意が必要であるといえます。

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