世界的なコロナウイルスの感染拡大による経済への影響や米中貿易摩擦による中国企業の影響により、販売力の低下や工場の閉鎖を余儀なくされ、業績悪化する企業が増えています。
価格調整金の検討
このような場合、親会社から海外子会社に対し、利益補填(価格調整金の支出)をするという考え方があります。価格調整とは、既に行われた国外関連取引に係る対価の額を事後的に移転価格上適正な価格(独立企業間価格)に変更することです。
価格調整金の適正性
移転価格税制上、価格調整金等の取引には「合理的な理由に基づく取引価格の修正」であることが求められます。合理性の検討は、支払等に係る理由、事前の取り決めの内容、算定の方法及び計算根拠、支払等を決定した日、支払等をした日に関し行うものとされ、合理性がない場合は寄附金課税の適用が税務調査において検討されます。
価格調整金支出時の留意点
①価格調整金は、相手国との間で損益が認識される事が前提となります。その調整方法によっては、相手国での損金が認められない場合も考えられますので、双方の国の税制を確認しておかないと、二重課税が発生する可能性がありますので、事前の確認が必要です。
②一般的にロイヤルティや役務提供取引であれば、関税の対象にはなりませんが、製品価格の一部として捉えられる事もあり、関税への影響についても確認をしておく必要があります。
③独立企業間価格をTNMMとしている場合には、価格調整金を収受しても、財務諸表上の営業利益率には影響しないため、価格調整金の支出事業年度での同時文書化により、価格調整金による調整の影響を開示することが有効であると考えます。また、比較対象企業の営業利益率のレンジについて、今年度の利益悪化の影響を受ける事が予測されますので、この点についても注意が必要です。
参考情報
OECDでは2020年12月18日にCOVIDに関する移転価格のガイダンスを発表しており、比較対象性分析、COVID関連コストとその配分、政府の支援、APAについて見解を述べているので参考としてください。
【参考リンク】OECDによる「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」の公表について(国税庁より)