シンガポール 2021年度税制改正 ~予算と税制改正概要~ | アタックス税理士法人 国際部

シンガポール 2021年度税制改正 ~予算と税制改正概要~

2021年6月18日

先月号でお伝えをしたようにシンガポールにおける新型コロナ感染症(以下、「コロナ」)の感染者数が増加し、新規入国者の隔離期間の延長や店内飲食の禁止など、即座に様々な対策が講じられました。迅速かつ厳格な措置により、感染者数も落ち着きをみせ、今月から規制が段階的に緩和され、経済活動が再開されるようになっています。

   先月のシンガポールコラムはコチラ 

さて、今回は2021年度税制改正の概要をお伝えします。 

コロナの影響により、飲食業を中心に助成金を支給するなど財政面では厳しい状況となっていますので、減税や税額控除の拡充などは行われませんでした。

法人所得税

1.税率と税額控除

 税率については改正がなく、17%のままとなっています。0から200,000SGDの課税所得に対し適用される部分免税は継続されます。一方、現金一律支給するリベートは導入されませんでした。

2.未控除減価償却及び未控除欠損金(以下、「適格控除」)の繰戻し期間の拡大

2020 賦課年度と同様に、100,000SGDを上限として、一 定の要件を満たす場合、適格控除を直前の 3 賦課年度において発生した課税所得と相殺可能することができます。

3.適格内装工事に関する費用の加速償却

事業目的により適格内装工事に関する費用を支出した場合、当該支出が発生した基準年度以降の連続する 3 賦課年 度において損金算入することが認められています。2021 賦課年度については、2020 賦課年度と同様に、1 賦課年度での損金算入を可 能とすることができます。

連続する 3 賦課年度における当該費用上限額は、30 万 S ドルで現行制度から変更はありません。また、加速償却を選択した場合、適用を取消すことはできません。

4.寄付金控除の延長

 今後も寄付を奨励することを目的とし、政府指定の非営利団体(Institution of a Public Character, IPC)及びその他の適格受給者への寄附金に対して250%の所得控除を適用する現行制度は延長されることになりました。

個人所得税

今回の税制改正により、税率や所得控除に関して改正された項目はありません。

Goods and Services Tax(GST)

1.税率

 今回の改正では税率は7%に据え置かれたものの、2022年から2025年の間に税率を9%に引き上げる予定であることが発表された。

2.輸入に関するGST課税の拡大

従来の制度では、航空便/郵便によりシンガポールに輸入される400SGD以下の物品については輸入時に GST は課税対象外となっていました。

また、教育関連、フィットネス関連、遠隔医療等のライブ配信される B to C の非デ ジタルサービスがシンガポール国外から提供される場合、輸入GST の対象外となっていました。

デジタル経済の発展に対応するため、2023 年 1 月 1 日以降、次のとおり輸入 GST の対象範囲が拡大されることになります。

 a) 航空便/郵便によるすべての物品の輸入については、海外ベンダー登録制度及びリバース・チャージ方式により GST を徴収する。

b) B to C の非デジタルサービスの輸入については、海外当該サービスを提供する国外事業者は、海外ベンダー登録制度の下、GST 課税業者として登録し、GST 申告・納付を行うことになる。

その他、コロナによる低調な経済状況下において、各企業の雇用維持、促進を目的とし、シンガポール人もしくは永住権保有者の雇用に助成金を支給する制度や雇用者数が増加した法人に対し助成金を支給する制度が設けられており、適用期間の延長や制度拡充が行われました。

一方、外国人雇用を制限する方針については、特段の変更はなく、今後も制限が強化される厳しい状況は継続することになります。

今回は、今年度の税制改正の情報をお伝えしました。また、次号もご期待ください。

ご相談・お問い合わせはこちら
コラムお問い合わせ
上部へスクロール