金融口座情報が自動的に情報交換される??~CRSの実態について~ | アタックス税理士法人 国際部

金融口座情報が自動的に情報交換される??~CRSの実態について~

2021年7月30日

日本はオリンピック開催期間中ですね。盛り上がっていますでしょうか。

シンガポールでは夜の社交場でクラスターが発生し、外食人数が改めて制限されるなど残念ながら状況の好転には至っていません。 

さて、今回は「Common Reporting Standard(以下、「CRS」)」についてお話します。 

制度の概要

各国の税務当局が、自国に所在する金融機関から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対し、その金融口座情報を自動的に提供する制度です。

日本の対応

2018年以降、国税庁は、国内の金融機関から非居住者にかかる金融口座情報を毎年4月末を期限とし報告を受け、その年の9月末までに外国の税務当局に対し情報提供を行うとともに、外国の税務当局から、日本の居住者が保有する金融口座に関する情報提供を受けています。

令和2事務年度においては、80以上の国や地域から200万件を超える情報が受領され、また、およそ70の国や地域に対し60万件を超える口座情報が提供されています。

日本とCRSを実施する国及び地域

2021年3月時点で、103の国または地域との間で、CRSに基づく自動情報交換が実施されています。

シンガポールも2018年に初めての情報交換が行われ、その後も自動情報交換の対象国となっています。

そのため、銀行口座等の開設時には、申し込みにかかる必要書類と併せてCRSに関する書類の作成が必要になります。

CRSに基づき入手した情報の活用事例

1.所得税関連

 国税局がCRSにより日本居住者の口座情報を受領し、所得税申告書等の提出書類に関連する所得及び財産の記載がなかったため税務調査が行われた事例があります。

 その結果、海外の口座の入出金をもとに海外における資産運用から得た所得や不動産所得の申告漏れが判明しました。

2.法人関係

国税局がCRSにより日本法人の海外子会社の口座情報を受領し、提出済みの申告書等と確認を行ったところ申告内容に疑義があり税務調査が行われた事例です。

その結果、外国子会社合算税制の判定及び計算誤りが判明しました。

3.相続税

国税局がCRSにより被相続人と相続人のジョイント口座の情報を受領し、相続税申告書に当該口座が申告されていなかったことから税務調査が行われた事例です。

その結果、相続人のひとりが意図的に相続財産から除外して申告を行ったことが判明しました。

日本の国税局が、シンガポール課税当局(IRAS)を通じてシンガポール法人の情報を収集することもあります。 IRASがシンガポール法人へ署名を送付し、過年度の決算書、株主構成、株主総会議事録などの提出が求められるケースがあります。

また、シンガポール法人が口座を保有する金融機関に対し、過去の口座記録を請求した旨の通知が行われることもあります。

このように、日本居住者や日本法人が海外に保有する金融口座情報について、各国の課税当局間で情報交換が行われています。

海外にある口座は国税局に捕捉されないという甘い情報に惑わされず、適正な申告及び納税を行うことをお勧めします。

次回は、シンガポールの会計事務所に勤務していてよく頂くご質問、お問い合わせ事例をご紹介する予定です。

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