令和3年度税制改正において、「納税管理人制度」が見直され、非居住者等が納税管理人を選任していなかった場合等の措置が講じられることとなりました。
本改正は、令和4年1月1日以降に適用されます。
納税管理人制度とは?
海外赴任などで1年以上の予定で海外に赴任すると、一般的には所得税法上の非居住者となることを当コラムで確認しました。(7/2コラム:一時帰国者の課税関係まとめ(1))
非居住者となったとしても、その海外赴任者に日本国内に保有する不動産の賃貸に係る不動産所得が一定額以上あるなど、日本で発生した一定の所得等がある場合には、日本において確定申告書を提出する必要があります。
納税管理人制度とは、上記のような場合に自分の代わりとなる「納税管理人」を選任し、自身に代わって納税申告書の提出や税金の納付等を委任することをいいます。
令和3年度改正の背景
非居住者で上記のように納税申告書を提出する必要がある場合等には、納税管理人の選任が国税通則法第117条により義務づけられています。
この選任は、非居住者である本人が行うものとされていましたが、実際には納税管理人の選任をせずに出国してしまうケースも少なくありませんでした。
税務当局側も非居住者の所在の把握は簡単なことではなく、税務調査等の実施をしようにも非居住者の所在が判明しないことには送達が完了できないなどの問題がありました。
改正後の納税管理人制度
このような問題への対処のため、令和3年度税制改正によって、次のような措置が講じられることとなりました。
① 税務当局から納税者に納税管理人の届出をすべきことを書面で求めることができる。
② 非居住者等が納税管理人を適切に選任しない場合には、税務当局は「国内便宜者」に対してその非居住者等の納税管理人となることを求めることができる。
※「国内便宜者」とは、国内にいる非居住者の親族や外国法人の国内子会社などが考えられます。
③ 税務当局は、①の求めを受けた納税者が指定日までに納税管理人の届出をしなかった時には、②により納税管理人となることを求めた国内便宜者のうち一定の国内関連者を納税管理人と指定することができる。