海外赴任で仕事をしていても、日本の所得税が課されて確定申告が必要になるケースがあります。このような税金のルールを知っておかなければ、後々トラブルになりかねません。
本記事では、海外赴任で守るべき税金のルールについて、適用される条件や控除の使い方を解説します。
【基本】海外赴任で守るべき税金のルールとは?大切な4つのポイント
税金のルールは日本国内で 適用されるものです。しかし、海外赴任のような「日本に住んでいない・仕事をしていないケース」であっても、日本国内のルールが適用される場合があります。もし守らなかった場合、トラブルに巻き込まれる可能性もあるため注意が必要です。
ここでは、海外赴任で守るべき税金のルールについて、以下の4つのポイントを解説します。
- 「日本居住者」と「日本非居住者」
- 年末調整で精算する必要がある
- 海外で得た給与は対象外
- 日本国内の所得があれば確定申告
特に、これまで海外赴任の経験がない方は、それぞれのルールを確認したうえで海外赴任に臨みましょう。
①「日本居住者」と「日本非居住者」
日本の税法では、国内外の所得を区分するために「日本居住者」と「日本非居住者」の区分を設けています。具体的には、以下のような条件に該当する場合には「日本非居住者」とされます。
日本国内の会社に勤めている給与所得者が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。
引用:国税庁『No.1923 海外勤務と納税管理人の選任』
例えば、海外出張で海外に10ヶ月間いた場合であっても、所得税上の区分では「日本居住者」です。
区分によって税金のルール上の対応が異なるため、この点には注意が必要です。特に、海外赴任をされる方は、”自身がどのくらい海外で仕事をするのか”を確認しておきましょう。
②年末調整で精算する必要がある
日本非居住者として1年以上の海外赴任が決まっていた場合、会社側は時期に限らず年末調整をしなければなりません 。この場合の年末調整では、通常の対応と異なる点があります。
- 保険料控除:出国するときまで に支払われたものに限る
- 扶養控除・配偶者控除:出国のときに対象を判定
ただ、年末調整の方法は、年度末におこなわれる年末調整と同様です。 海外赴任を予定されていれば、年末調整の対応について会社にも確認しておきましょう。
③海外で得た給与は対象外
原則として1年以上海外赴任をする場合、海外で得た給与は日本の課税対象となりません。
一方で日本居住者の場合には、海外で得た給与は日本の課税対象です。ただし、日本と海外赴任先の国が租税条約を締結していれば、ルールは租税条約が優先されます。
日本非居住者であれば日本国内の税金ルールの影響はありませんので、海外赴任先の国のルールを確認しておきましょう。
④日本国内の所得があれば確定申告
ただ、海外で得た給与が日本の課税対象ではない日本非居住者であっても、以下のような「日本国内の所得があった場合」には確定申告が必要です。
1 国内にある資産の運用または保有により生じる所得(源泉徴収されない取引)
2 国内にある資産の譲渡により生じる所得
3 国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価(不動産所得)
4 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく一時金
引用:国税庁『No.1923 海外勤務と納税管理人の選任』
確定申告は自身でおこなわず、「納税管理人」を選任したうえで納税管理人に確定申告してもらう必要があります。選任には日本非居住者の納税地を所轄する税務署長に『所得税・消費税の納税管理人』を提出するようにしましょう。
【日本非居住者へ】日本国内で所得があれば確定申告が必要!
海外赴任として日本国内で給与がなくとも、以下に該当する場合には確定申告が必要です。
- 資産運用で所得を得た場合
- 日本国内の資産譲渡によって所得を得た場合
- 不動産運用で所得を得た場合
- 日本国内にある会社で締結した保険などの一時金
資産運用・不動産所得・保険の一時金などの海外赴任前から保有していた資産から生まれた所得が主となります。
海外赴任をしていれば、日本国内で確定申告ができません。そのため、基本的には「納税管理人」を選任しておき、確定申告の手続きを代行してもらいましょう。海外赴任の出国前に税理士や会計士に相談しておけば、スムーズな対応が可能です。
まとめ
本記事では、海外赴任で守るべき税金のルールについて、適用される条件や控除の使い方を解説しました。
海外赴任が初めてであれば、税金のルール以外にもさまざまな準備を進めなければなりません。しかし、税金のルールをなおざりにすれば、後々大きなトラブルになりかねません。
このような事態を避ける意味でも、海外赴任で出国する前に税理士や会計士などのプロに相談しておくのがおすすめでしょう。プロのサポートやアドバイスを参考にして、ぜひ、ゆとりのある準備を進めてください。