令和5年11月に国税局から令和4年度の法人税の税務調査の実績が発表されました。
調査対象はあらゆる資料情報や提出された申告書などの分析・検討を通じて、大口および悪質な不正計算が想定される法人など、調査が必要な法人が6万2千件に上りました。
その結果、申告漏れの所得金額は7,801億円、追徴税額は3,225億円となり、1件当たりの追徴税額は5,241千円となっています。
①法人税の調査状況
調査対象法人は前年比で1.5倍に増加し、調査件数は62千件(前年41千件)でした。
その内、申告漏れの所得金額は7,801億円(前年6,028億円)、追徴税額は3,225億円(前年2,307億円)、また、1件当たりの追徴税額は、5,241千円(前年5,701千円)で、前年比91.9%となりました。
特に、海外取引に関連する申告漏れ所得は2,259億円に達し、輸出入取引や海外投資を行う法人に対しては厳正な調査が行われました。
また、非居住者や外国法人に支払われる国内源泉所得に関する源泉徴収漏れも、総額40億円を追徴しました。
②海外法人に対する不正な手口(法人税)
海外法人による不正行為の例として、国外の関連法人を利用して売上を除外する手法が挙げられます。
調査対象の法人A社は、X国法人との取引において偽の商業送り状を発行し、実際の取引に介在しているかのように偽装していました。
その他の手口としては、
国外関連者との取引価格を低く設定し利益を移転すること
国外売上の一部を除外すること
国外関連法人への利益の付け替え
貸付金利息や技術支援料を請求せずに利益供与する
などがあります。
③海外法人に対する源泉徴収漏れ(源泉所得税)
非居住者による不動産譲渡に関する源泉徴収漏れも問題とされています。
ある法人はX国の非居住者に対して貸し付けた金銭が返済されず、その代わりに国内の不動産による代物弁済を受けましたが、これに対する源泉徴収が行われていませんでした。
他にも、非居住者に支払った使用料や配当に関する源泉徴収漏れが指摘されています。
④今後の展望
今後は、AIを活用して調査対象法人を選定し、海外取引に関する税務調査が一層増加すると考えられます。
したがって、海外取引がある場合には、国際税務に詳しい税理士と協力し、適切な対策を講じることが重要です。