国内から海外へ送金する際にかかる税金や、送金時の注意点などが気になる方へ。
本コラムでは、海外送金で申告が必要なケース、適切な税負担の軽減法について解説します。
税務署は、一定の国外送金(100万円以上の送金が目安)について把握できます。海外送金について正しく申告できていない場合、「税務署からのお尋ね」が届き、追徴課税の対象になりかねません。そのため、正しい知識はぜひ身に着けておく必要があります。
海外送金する予定や、海外送金時の税金について不安のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
国内から海外送金する際の税金として贈与税がある
国内から海外へ送金する際にかかる税金として、贈与税の対象となる場合があります。贈与税は、財産を無償で他人に譲渡した場合に課される税金です。海外送金が贈与とみなされる着目点としては、送金者と受取人の関係性、送金額、送金の目的などが考慮されます。
なお、海外送金によって所得(経済的利益)は生じないため所得税はかかりません。ただし、日本に5年以下の期間で滞在する外国人(非永住者)については注意が必要です。海外で得た所得(国外源泉所得)を海外から日本へ送金すると、送金課税される場合があります。
関連記事:日本国外から日本に送金すると日本で課税されるの?送金課税って何? | アタックス税理士法人 国際部
国内からの海外送金に関して税金申告する3つのケース
海外送金に関して税金申告するケースは以下の通りです。
- 受取人が一時居住者でない
- 送金人が贈与前の国籍・住所要件を満たしていない
- 送金人が外国人贈与者でない
注)「一時居住者」とは、贈与前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である人
贈与税の有無について、下表を参照してください。
出典:国税庁「No.4432 受贈者が外国に居住しているとき」
黒塗りの区分はすべての財産が課税対象となり、白塗りの区分は国内財産のみが課税対象です。
以下で詳細に解説します。
1.受取人が一時居住者でない
海外送金について日本国内に住所のある方が、一時居住者でない場合は課税される可能性があります。以下の方は、贈与税における在留資格者(在留期間を定めて滞在する外国人)ではないため無制限課税です。
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者
日本国内で取得したすべての財産が、贈与税の課税対象になります。
注1)「永住者」とは、在留期限が無制限で就労制限などのない外国人の方。
注2)「定住者」は、就労制限などはありませんが、在留期間ごとの更新は求められています。
2.送金人が贈与前の国籍・住所要件を満たしていない
受取人が一時居住者であっても、送金人が贈与前10年以内に日本の住所があり、当該期間に日本国籍があると無制限課税です。
当該期間に日本国籍がなかった外国人からの送金であれば、国内財産のみが課税対象となります。
一時居住者として海外送金を受け取るときは、送金人の住所歴と国籍について確認しなければなりません。
3.送金人が外国人贈与者でない
日本に住所のある方が海外送金するとき、送金人が在留資格者(外国人贈与者)でなければ無制限課税です。
永住者や定住者、日本人の配偶者が海外の友人や家族に送金すると、受取人に申告納税の負担が生じる場合があります。
海外送金にかかる税金を適切な範囲に抑える3つの方法
海外送金にかかる税金を、適切な範囲で抑える方法を紹介します。
- 基礎控除額110万円以内で贈与する
- 国外居住親族に係る扶養控除の適用を受ける
- 生活費や教育費に充てる贈与であることを明らかにする
実践できる方法がないか、ぜひ確認してください。詳しくは専門知識を持つ税理士に相談するとよいでしょう。
1.基礎控除額110万円以内で贈与する
海外送金が贈与税の課税対象となる場合でも、1年間(暦年)に110万円以内であれば贈与税は発生しません。
海外送金のほかに課税財産がなければ贈与税が発生しないため、贈与税の申告も不要です。
2.国外居住親族に係る扶養控除の適用を受ける
所得税法上の居住者であり、海外に住む親族に送金している場合は、扶養控除の適用を受けられる可能性があります。
国外居住親族について扶養親族の適用を受けるには、年齢区分に応じた必要書類の提出が必要です。
詳しくは以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:非居住者の扶養控除って変わったの?~要件の変更に注意!いつから? | アタックス税理士法人 国際部
関連記事:海外に扶養親族がいるときの年末調整はどうするの~国外居住親族とは~ | アタックス税理士法人 国際部
3.生活費や教育費に充てる贈与であることを明らかにする
扶養義務者相互間の海外送金に関して、生活費又は教育費、医療費など「通常必要と認められる財産」は非課税です。
金額によっては、海外送金について調査が入る可能性が高くなります。
贈与税の非課税財産と認められるためには、贈与資金の使途を明らかにすることが重要です。
また、預金や株式、不動産の購入は「通常必要と認められる財産」ではないため注意してください。
国内から海外へ送金する際の税金に関するFAQ
国内から海外へ送金する際の、税金に関するFAQを紹介します。
Q1.100万円以上の海外送金は税務署に把握されている?
税務署は100万円超えの海外送金について、銀行から提出される国外送金等調書により把握します。
国外送金等調書にされる事実は以下の通り。
- 送金人と受取人の氏名又は名称
- 送金人の住所
- 送金金額
- 送金年月日
- 送金原因
- 相手国名
海外送金について、100万円を小分けにしても、税務署が全く把握できないわけではありません。
Q2. 贈与に関する注意点は?
財産が国外にある場合、送金前に書面で贈与契約を締結しておくとよいでしょう。
非居住贈与者から一時居住者への贈与は、日本にある財産のみ課税対象です。
財産の所在は贈与により取得した時の現況で判定されます。
財産取得の時期は、書面で贈与契約した場合、契約効力の発生時とされています。
送金前に書面で贈与契約を締結しておくと、契約効力発生時の現況で判定されるため、国外財産であり課税対象外です。
まとめ
国内からの海外送金に税金がかかるかは、送金人と受取人の住所関係などによって決まります。
特に100万円以上の海外送金は、銀行など金融機関が「国外送金等調書」を税務署に提出しています。
そのため、税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が届く場合も想定しておきましょう。
また、今回紹介したケースのほかにも、海外送金で税金がかかるケースがあります。
海外送金に関する税金について不明点があれば、国際税務に詳しい税理士へのご相談をおすすめします。