サッカーの元スペイン代表でJ1のヴィッセル神戸に所属していたアンドレス・イニエスタ選手が、
大阪国税局から契約金などの申告漏れを指摘されました。
イニエスタ選手はヴィッセル神戸に所属していた2018年7月から2023年7月のうち、
2018年分の契約金などについて、大阪国税局からおよそ8億6000万円の申告漏れを指摘され、およそ5億8000万円を追徴課税されました。
その後、3月23日、コメントを発表しました。
イニエスタ選手は「指摘された期間についてはスペインで所得税申告書を提出した」などとしています。
今回は、「スペインで所得税申告書を提出した」というテーマについて記載したいと思います。
イニエスタ選手と外国税額控除:非居住者判定の関係
イニエスタ選手のような外国人サッカー選手がスペインで支払った税金について、
日本で外国税額控除を利用できるかどうかは、日本の居住者であったか、日本非居住者であったかが重要になります。
非居住者判定
日本税法では、居住者と非居住者を以下の要素に基づいて判定します。
・滞在日数: 1年間に183日を超えて日本に滞在する場合、居住者とみなされます。
・生計中心地: 家族や生活の中心拠点が日本にある場合、居住者とみなされます。
・勤務先: 日本に勤務先がある場合、居住者とみなされます。
イニエスタ選手の場合
イニエスタ選手は、スペインに家族を置いており、
オフシーズンはスペインで過ごしているため、生計中心地はスペインと考えられます。
また、ヴィッセル神戸での勤務日数は1年間に183日を超えない可能性が高いです。
上記を勘案して、2018年7月から12月までは、日本非居住者として申告していたと想定されます。
外国税額控除の概要
外国税額控除とは、外国で支払った所得税を、居住国の所得税から控除できる制度です。
これは、二重課税を防ぐための措置です。
日本とスペインは租税条約を締結しており、両国間の二重課税を回避するための規定が定められています。
イニエスタ選手の場合
イニエスタ選手は、日本とスペインの双方で所得税を支払う必要があります。
①日本で支払う所得税:
イニエスタ選手は、日本での給与収入に対して、日本の所得税法に基づいて所得税を支払います。
②スペインで支払う所得税:
イニエスタ選手は、スペインの居住者であるため、全世界所得に対してスペインの所得税を支払います。
③外国税額控除を受けるための要件
イニエスタ選手がスペインで外国税額控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・日本とスペインの双方で所得税を支払っていること
・支払った所得税が、日本とスペインとの租税条約で定める控除対象となる所得税であること
・控除を受けるための一定の書類を揃えていること
④控除を受けるための書類
イニエスタ選手がスペインで外国税額控除を受けるためには、以下の書類を揃える必要があります。
・日本の所得税申告書および納税証明書
・スペインの所得税申告書および納税証明書
注意点として、外国税額控除の額は、日本で支払った所得税とスペインで支払った所得税のいずれか少ない金額となります。
日本で支払った所得税すべてが外国税額控除の適用になるわけではないので、注意して下さい。
イニエスタ選手への影響
イニエスタ選手は、2018年に外国税額控除を受けることによって、スペインで支払う所得税を軽減したと想定されます。
しかし、大阪国税局は2018年は日本非居住者ではなく、日本居住者と認定したようです。
日本で納税しているが、所得税が少ないということで、巨額の申告漏れを指摘されています。
今後、日本とスペインでどのように取り扱われるのかを、見守りたいと思います。