海外不動産に投資する際は、税金について正確に理解する必要があります。投資先の国や、日本と相手国との取り決めによって、税金の種類や支払い方が異なる場合があるからです。
今回のコラムでは、海外不動産投資で発生する可能性のある税金と、利用できる控除について解説します。海外の不動産へ投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
海外不動産投資で税金が発生する3つのフェーズ
海外不動産に投資するときは、国内と海外の双方で税金を支払う必要があります。税金が発生するフェーズは大きく分けて3つです。
- 不動産を取得したとき
- 不動産を保有しているとき
- 不動産を売却したとき
ここではアメリカを例に挙げ、それぞれのフェーズでどのような税金が発生するかを解説します。
不動産を取得したとき
海外不動産を取得すると、一般的に不動産取得税や印紙税がかかります。不動産取得税は不動産を取得したときにかかる税金、印紙税は契約書の作成にかかる税金です。
ただし、アメリカの場合は基本的にどちらの税金もかかりません。特に、印紙税は契約を結んだ国のルールが適用されるため、アメリカで締結すれば不要です。
不動産を保有しているとき
不動産の保有中に発生する税金は次のとおりです。
※ニューヨーク市であれば1.62%
アメリカでの賃料収入における納税方法は、ネットレント課税方式のほか、申告せず収入の30%分を納める源泉徴収方式もあります。しかし、後者は採用していない州も多いため、ネットレント課税方式で確定申告するのが基本です。
不動産を売却したとき
不動産の売却時には「賃貸」や「自己使用」にかかわらず、日本とアメリカの双方で確定申告する必要があります。なお、日本の譲渡にかかる税は、短期譲渡所得税と長期譲渡所得税のいずれかとなります。
※ 日本では譲渡した年の1月1日現在の所有期間で計算する。
アメリカの譲渡所得税については下記のとおりです。
上記の譲渡所得税は連邦税(日本でいう国税)として納めますが、このほか州税がかかる地域もあります。
海外不動産投資で知っておきたい2つの要点
海外不動産に投資する際は、以下の要点を押さえましょう。
- 外国税額控除
- 減価償却
特に減価償却は、2020年の法改正で取り扱い方が変わりました。それぞれ解説します。
海外に納めた税が還付される「外国税額控除」
納税は国内と海外の双方で必要ですが、申請すれば海外に納めた分が還付されます。この制度を外国税額控除と呼び、財産上の負担を軽減できます。
外国税額控除を受けるには、住所地を管轄する税務署に申請しなければなりません。申請時には、以下の必要書類もそろえましょう。
- 確定申告書
- 外国税額控除に関する明細書
- 外国で所得税を納めた証明(控除限度額の記載も含む)
- 国内での所得総額に関する明細書
なお、控除が適用されても、必ずしも全額が戻るわけではない点に注意してください。
2020年の法改正で変わった「減価償却」
2020年の法改正により、海外不動産投資において法改正がありました。
改正後は中古建物から生じる赤字のうち、減価償却費に相当する部分については損益通算ができなくなっています。そのため、個人で投資する場合、減価償却費を給与所得などとの通算ができません。改正前と比べて納税額が高くなる傾向に注意が必要です。
法人であれば減価償却の損益通算も適用されますが、効果を実感できるのはあくまで単年度のみです。長期的には、売却価格と減価償却した帳簿価額との差分から発生する譲渡所得税を納めないといけません。
ただし、損益通算ができなくとも、不動産を運用することでドルを保有できます。国内でインフレ(貨幣より物価が高くなる現象)が発生したとき、円に加えてドルを持っていればリスクヘッジにつながるでしょう。
海外不動産投資は税金の知識が必要不可欠
海外不動産投資では、固定資産税や所得税など国内と海外の双方に税金を納める必要があります。しかし税金の計算は複雑であり、特にアメリカでは州によっても算定方法が異なる場合もあります。
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編集者:アタックス税理士法人 国際部 編集チーム