今回は、シンガポールで勤務していて、よく質問を受ける相談事項についてお話します。
シンガポール進出(法人)
Q. 法人税が低いシンガポールに法人を設立し、事業を移管した場合、節税することはできますか?
A. 日本の税制上「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)」という制度が設けられています。
ペーパーカンパニーのような実態がない外国法人の場合、外国法人が得た所得をその株主である日本の法人や居住者の所得に合算して日本で法人税や所得税を課税する仕組みです。単純に法人を設立しただけでは、タックスヘイブン対策税制により、日本で法人税もしくは所得税が課税されます。
Q. 仮装通貨事業で大きな利益が出そうなので、シンガポールに法人を設立したいです。
A. 近年、マネーロンダリングの観点から、仮装通貨事業を事業目的とした会社設立、銀行口座開設は非常に厳しい状況です。
また、設立できた場合でも、タックスヘイブン対策税制による日本における課税の可能性があるため、日本側の顧問税理士に確認を行ってください。
シンガポールへの移住
Q. 移住するためのビザは簡単に取得できますか?
A. これまでのコラムでご紹介したように、シンガポールでのビザ取得は非常に難しくなっております。新型コロナウィルス感染症の影響の長期化により、ビザの発行が制限されている状況が継続しています。移住の実現には、綿密に計画を練る必要がありますので、ご検討されている場合、1~2年の余裕をもってご相談ください。
Q. 移住すると相続税や贈与税はかからないですか?
A. 相続や贈与する財産がどこにあるのか(財産の所在地)、シンガポールに居住する期間がどれくらいかにより回答が異なります。日本の方であれば、日本にある財産は必ず相続税、贈与税の課税対象となるとご理解いただき、国内の専門家にご相談されることをお勧めします。数多くの事例を見ていますが、お仕事の関係、医療の関係、お子様の大学進学の関係で、移住したものの、日本へ戻られる方々も多くいらっしゃるのが実情です。
Q. シンガポールに年間183日滞在すると、日本の非居住者扱いになりますか?
A. 日数は最も大きな要素ですが、他に仕事はどこで行われているか、家族はどこにいるのか、居所はどこにあるか、財産はどこにあるか、これらを総合的に見て居住性を判断することになります。居住地の判断にあたっては、顧問税理士にご相談されることをお勧めします。
銀行口座
Q. 海外に口座を持っている情報は国税局に伝わるのですか?
A. 前回のシンガポールコラムで紹介しました、国家間で行われる金融口座の自動交換制度により口座開設等の情報は自動で交換されることになります。したがって、海外の口座の有無や口座内の所得については、適正に日本で申告または調書の提出を行ってください。
Q. シンガポールの口座が閉鎖されるとの通知が届きました。
A. 金融機関にもよりますが、3か月間取引がない口座は金融機関により凍結、閉鎖されてしまいます。シンガポールに赴任していて、口座を開設したまま帰国される場合もありますが、取引がないと閉鎖される可能性がありますのでご注意ください。
よく質問されることをいくつか紹介をしてみました。
日本での課税や取り扱いについては、顧問税理士に詳細な事実を説明した上で助言を受けることをお勧めします。