世界的に流行したコロナ感染症も少しずつ落ち着きを取り戻し、日本では緊急事態宣言も解除されました。今後は、ワクチンパスポートなどを利用し、徐々に経済が活性化していくことと予測されています。
海外法人との取引についても活発になる事が予測されます。
「海外法人との取引に注意!!」
海外法人との取引では、金銭の収受時について、思いもよらず納税をしなくてはいけなくなり、結果的に、二重課税(日本と相手国)になる場合が多くあります。
今回のコラムでは、海外取引に係る税金処理を間違えた場合に、取り返しがつかない事が多い源泉徴収にかかわる事案を紹介いたします。取り返しがつかないとは、日本法人が制度上では、本来負担しなくてもよい税金を、実務上は負担してしまう事を指しています。
①日本法人が取引の対価を支払う場合の源泉徴収
海外法人に対して支払う対価について、取引内容によっては源泉徴収が必要になります。源泉徴収税額は取引によって違いますが、概ね20.42%です。
源泉徴収義務者は支払を行う日本法人となりますので、手続きを忘れた場合には、日本法人が税務当局へ税金の支払いを行います。
この税金は、本来であれば、海外法人へ請求するのですが、発覚するのが税務調査時などの事後的であり、多くの場合に請求が出来ず負担だけが残る事が散見されます。
このような、源泉徴収が必要な取引は、ロイヤルティ、著作権などの無形資産の使用料、配当金、借入金の利子の支払いなどがあります。
②海外法人が取引の対価を支払う場合の源泉徴収
海外法人が日本法人へ対価を支払う(日本法人は対価を貰う)場合に、税金が差し引かれる事があります。
差し引かれた税金は、日本の法人税申告において、外国税額控除が適用され、原則的には日本で納める税金から差し引いて計算されます。
ただし、対象となる税額は、租税条約で決められた税額に限定されており、海外法人が租税条約の改正に気付かず(税率の間違いが多い)に、従来の方法で徴収した場合には、全額が日本での外国税額控除の対象とならない場合が散見されます。この場合も日本法人の負担となる事が多く見受けられます。
源泉徴収される取引は、相手国との租税条約によって違います。概ね上記①に例示した取引が対象となりますが、詳細は、相手国との租税条約を確認してください。
当然ではありますが、源泉徴収の対象取引以外の税金が差し引かれた場合も、外国税額控除の対象にはなりません。そればかりか、法人税の損金(経費)にもならない場合もありますので、海外法人から支払われる報酬については、相手国の税制をしっかり確認する事が必要です。
これまで述べてきたとおり、海外法人との取引については、金銭の収受の段階においても注意をしなければいけません。経理部門や税務部門の方には、定期的に取引関係と金銭の収受時にかかる税金について、再認識するとともに、適正な課税関係になっているか再確認をしてみる必要があるのではないでしょうか。