一時帰国者の課税関係まとめ③~一時帰国中の現地払い給与に対する課税について~ | アタックス税理士法人 国際部

一時帰国者の課税関係まとめ③~一時帰国中の現地払い給与に対する課税について~

2021年10月22日

新型コロナウィルス感染症(以下、「コロナ」)の影響によって海外赴任中だった従業員が日本に一時帰国し、赴任先に戻ることができずに日本滞在が長期化するケースが多くみられます。

このようなケースにおいて生じる税務上の留意点を今一度整理していきたいと思います。

前回のコラムでは、一時帰国者の一時帰国中に支給を受ける日本払い給与に対する課税関係について確認しました(https://www.attax.co.jp/kokusai/column/post-2261/)。

今回は、この場合における現地払い給与に対する課税の取り扱いについて確認していきたいと思います。

Q. 一時帰国中の現地払い給与に対する課税はどうなるの?

【例】

日本法人である当社は、コロナの全世界における拡大に伴い、海外現地法人へ赴任している海外勤務者を日本に一時帰国させました。一時帰国後は、日本国内において赴任先法人の業務を行っています。海外勤務期間中、この海外勤務者に対しては現地払い給与の他、日本法人から留守宅手当を支払っていました。一時帰国期間中についても同様に給与支給を行う予定ですが、この海外勤務者に対して支払う現地払い給与に対する課税関係はどのようになりますか?

【考え方】

通常、1年以上の予定で海外勤務している場合には、日本の非居住者に該当します。非居住者については国内源泉所得に対してのみ日本で課税されることになります。

日本に一時的に帰国し、日本において業務を行った場合に海外現地法人がこの非居住者である従業員に支払う給与については、たとえ海外現地法人の業務を行ったとしても「日本で行った業務に対する対価」として国内源泉所得として所得税の課税対象となります。この給与については、国内において支払われるものではないため、給与の支払の際の源泉徴収は必要ありません。

ただし、非居住者で海外現地法人から国内源泉所得である給与の支払いを受けているため、原則として、日本の準確定申告書を作成し、その提出期限までに申告及び納付を行う必要がありますが(所得税法172条1項、3項)、この給与が「短期滞在者免税の要件」を満たす場合には、所得税は課されないこととなります。短期滞在者免税の要件は、下記3つの要件を満たすことが必要になります。

・滞在期間が課税年度又は継続する12か月を通じて合計183日を超えないこと

・報酬を支払う雇用者等は、勤務が行われた締結国の居住者でないこと

・給与等の報酬が、役務提供地にある雇用者の支店その他の恒久的施設によって負担されないこと

※この要件は一般的なものであり、個々の租税条約等によって特に①の日数の要件が異なる点に注意が必要です。

非居住者の状態で日本の滞在が長期化し、日本での滞在期間が183日を超えるような場合には、短期滞在者免税の適用対象外となり、日本において準確定申告が必要となる点に注意が必要です。

なかなかコロナが収束せず、現地に戻ることができないまま、気が付いたら183日を超えていた、というケースもあるかと思います。また、租税条約によって日数のカウント方法や細かい要件が異なっています。不安な場合には、お早めに専門家へ個別にご相談されることをおすすめいたします。

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