日本の法人税法では、企業が全世界で得た所得に対し課税を行います。その場合、日本の課税所得を構成する所得に対して、外国で法人税(または源泉所得税)が課税される事があります。このような一つの所得に対して、二重に課税されている状態を二重課税と言い、それを緩和するために、外国税額控除制度があります。
外国税額控除の計算では、日本で納めるべき税額から外国で納めた税金を差し引く方法で二重課税を緩和します。ただし、外国で納めたすべての税金が対象となるわけではありません。
今回は、外国税額控除を適用する際に対象となる外国法人税について、解説いたします。
外国法人税の範囲の把握が必要です
外国法人税に含まれるものは以下の通りです。
- 超過利潤率その他法人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
- 法人の所得又はその特定の部分を課税所得として課される税の附加税
- 法人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
- 法人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、法人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税
外国法人税に含まれないものは以下の通りです。
- 税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求する事ができる税
- 税の納付が猶予される期間を、その税を納付をする事となった者が任意に定める事ができる税
- 複数の税率の中から税の納付をする事となった者と外国との合意により税率が決定された税
- 外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税
高率負担分は控除できません
日本の法人税の実行税率を35%程度とみて、それを超える高率な部分は、二重課税が生じていないと考え、外国税額控除の対象とならないので注意が必要です。なお、対象とならない高率な部分の金額は、法人税の所得金額の計算上、損金に算入されます。
租税条約で定められている限度税率を超える部分は控除できません
租税条約を締結している国において発生した外国法人税において、租税条約で定められている限度税率を超えて課税される場合が、散見されます。限度税率を超える部分の金額は、対象外となりませんので、こちらも注意が必要です。
租税条約による源泉徴収は、海外で判断されている事が多く、条約改正に気付かずに課税される場合もあり、対応が後手になりやすい傾向にあります。日本側でも課税関係が正しく処理されているかを確認する事が必要です。
租税条約の改定情報は以下、国税庁のHPから「改正のあらまし(租税条約関係)」からも確認できますので、ご活用ください。
最後に、外国税額控除といっても、オールマイティではなく、控除の対象が規定されています。外国税額控除を適用する場合には、今一度、その外国法人税が、適用対象であることを確認する事をお勧めいたします。