暗号資産(仮想通貨)取引で利益が出たらどのくらいの税金を納めなければならないのか、非居住者になると税金を納めなくていいのか、または、非居住者になるためには外国へ移住等しなければならないが、日本の出国税(国外転出時課税)はかからないのか、いろいろと気になります。今回は暗号資産の課税関係や出国税との関係について整理します。
暗号資産の原則的な課税ルール
国税庁が平成29年12月1日に公表した暗号資産(仮想通貨)に関するQ&Aで、ビットコイン(BTC)など暗号資産(仮想通貨)の取引によって得られた利益は、原則として「雑所得」に区分されます。雑所得にならないのは、暗号資産(仮想通貨)の取引を事業としているケースなど一部に限られ、その際は「事業所得」に区分されます。
したがって、所得税は、5%から45%の累進税率で課税されます(住民税を含めると15%から55%にもなります)。
具体的には
暗号資産(仮想通貨)を売却したとき
暗号資産(仮想通貨)を売却したタイミングで利益・損失が確定し、売却金額が購入金額より高ければ課税の対象になります。
【例 10万円で購入したビットコイン(BTC)を50万円で売却したケース】
売却金額50万円 − 購入金額10万円 = 差額40万円が課税対象
暗号資産(仮想通貨)で買い物をしたとき
暗号資産(仮想通貨)で支払ったタイミングで利益・損失が確定し、決済時の時価が購入金額より高ければ課税の対象になります。
【例 10万円で購入したビットコイン(BTC)を使って、50万円の時計を購入したケース】
- 10万円のビットコイン(BTC)が50万円に値上がりしているケース)
時計の代金50万円 − 購入金額10万円 = 差額40万円が課税対象
暗号資産(仮想通貨)で他の暗号資産(仮想通貨)を購入したとき
暗号資産(仮想通貨)と他の暗号資産(仮想通貨)を交換したタイミングで利益・損失が確定し、交換時の時価が購入金額より高ければ課税の対象になります。
【例 10万円で購入したビットコイン(BTC)を使って、50万円分の他の暗号資産(仮想通貨)と交換したケース】
- 10万円のビットコイン(BTC)が50万円に値上がりしているケース)
暗号資産(仮想通貨)の交換価格50万円 − 購入金額10万円 = 差額40万円が課税対象
- 暗号資産(仮想通貨)をマイニングで入手したとき
マイニングに参加し、報酬として暗号資産(仮想通貨)を受け取った場合には、報酬を受け取ったときの時価から、マイニング等に要した費用を差し引いた金額が課税の対象になります。
- 暗号資産(仮想通貨)取引で損失が出たとき
株式投資やFX取引で損失が出た場合、確定申告をすれば翌年以降3年間、損失を繰り越せます。しかし、暗号資産(仮想通貨)の取引で生じた損失は、確定申告をしても翌年以降に損失を繰り越せません。ただし、暗号資産(仮想通貨)の取引で生じた所得が事業所得に該当し、かつ、一定の要件を満たす場合には損失を繰り越すことができます。
日本の非居住者への課税は
日本の税制は属地主義を採用しており、日本以外に住んでいれば日本の税制が適用されることはありません。日本の非居住者になれば、日本への納税義務はなくなります。あとは、日本以外の国での暗号資産(仮想通貨)の取り扱いによります。
出国税(国外転出時課税制度)の対象になるのか
平成27年度税制改正において、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」(以下「国外転出時課税」といいます。)が創設されたことにより、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の有価証券等を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税(復興特別所得税を含みます。)が課税されます。
具体的にどのような有価証券に対して出国税を課せられるのでしょうか。出国税の対象資産としては以下が挙げられます。
・株式、投資信託
・匿名組合契約の出資持分
・未決済の信用取引・発行日取引
・デリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)
今のところ、これら有価証券の中にはビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)は含まれていません。
暗号資産(仮想通貨)は出国税の対象にならないという見解が一般的です。
もちろん将来的には制度が変わるかもしれませんが、現行法上は、ビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)を有したまま日本の非居住者となっても、特に税金を支払う必要はありません。