較差補填はどこまで大丈夫?〜税務調査でどんな指摘をされるの〜 | アタックス税理士法人 国際部

較差補填はどこまで大丈夫?〜税務調査でどんな指摘をされるの〜

2021年12月15日

海外進出企業は、海外子会社に本社の社員を常時数名以上出向させている企業は多いのではないでしょうか。そして、日本本社の給与水準に比し、現地の給与水準が相当に低いことから、本社水準の給与との差額を日本本社が負担しているケースも多々見受けられます(較差補填)。

出向させている企業の悩みは、日本の課税当局から海外子会社が負担する給与の額が低すぎる、と指摘を受け、本社負担額の一部または全額について損金算入を否認されるケースではないでしょうか。

特に最近の税務調査では、日本本社が負担している金額の計算根拠の提出を求められて対応しきれず、最終的には修正申告により寄附金課税が行われているケースもあるようです。また、留守宅手当について、独身者に支払うのはおかしい等の理由で、給与較差の補てんに該当しないとされ、寄付金課税された事例があるようです。

では、税務調査において、海外子会社への出向者に係る給与負担額についての税務調査に対して、どのように対応すればよいでしょうか。今回は、較差補填について記載してみたいと思います。

較差補填とは

出向期間中も出向者との雇用関係が継続していることにより出向元法人が保証すべき給与・手当である限り、その支給すべき総額のうち、出向先法人が現地の給与ベース等に基づき負担すべき金額を超える金額、すなわち給与較差を負担することは、出向元法人に課された義務となります。

この出向元法人による出向先法人との給与較差の補填は、出向先法人に対する贈与に当たらず、寄附金課税の問題は生じないことが、法人税基本通達により明らかにされています。

また一般的に出向契約は、出向元及び出向先間で、二重に雇用関係を有する出向者について給与等の費用分担等を定めるものであり、役務提供契約ではありませんので、移転価格の問題はほとんど考慮する必要はないものと考えられます。

調査対策

出向元法人における調査対策としては、出向先法人が負担すべき適正な金額、すなわち現地の給与ベースを出向先に負担させ、かつ、出向先法人と締結する出向契約等に両社が負担する給与等についての記載をし、更に、出向元が出向中に保証する手当等について出向者本人との出向に係る契約書にその旨記載をすれば、それで十分であると考えます。

もちろん、出向先の現地における公的な統計資料や給与情報提供業者等が発行する各種資料を基に現地の給与ベースを出向者の職責・能力に応じて算定し、常時見直す必要があります。

税務調査で話題となる、法人税通達とは

法人税基本通達9-2-47(出向者に対する給与の較差補填金)で

「出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。

(注)出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差を補填するために支給したものとする。

 1.出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため、出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額

 2.出向先法人が海外にあるため、出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額」

と定めています。

較差補填については、必ずと言って良いほど税務調査で問題になります。なるべく早い段階で、専門家相談しながら対策することをおすすめします。

ご相談・お問い合わせはこちら
コラムお問い合わせ
上部へスクロール