2021年12月に公表された税制改正大綱について、国際課税に関する改正項目をご紹介するとともに、各項目について実務への影響などを踏まえたコメントをさせて頂きます。
自社や国外関係会社との取引について、該当する項目については詳細を確認していただき、自社の課税関係について影響を確認する事をお勧めします。
税制改正大綱による改正項目
①過大支払利子税制の見直し
日本に恒久的施設を持たない外国法人の不動産所得や人的役務提供に関する所得についても適用がされる事になります。
②外国子会社合算税制の見直し
特定外国子会社の保険会社特例の対象に、内国法人が出資し、管理支配されている保険会社を含める事になります。
③子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避措置を防止するための措置の見直し
令和3年3月に最高裁判決がされた事により、見直しがされました。詳細については、当コラムで以前に解説した内容をご参照(コチラ)ください。
④グループ通算制度における外国税額控除の見直し
税務当局が、進行事業年度での調整が必要な旨を説明し、説明の内容と異なる申告がされた場合には、更正処分を行う事が可能とされます。
⑤その他所要の措置
- 金融商品取引法に規定する市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引の決算により生ずる所得は、所得税法及び法人税法に規定する国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に含まれない事を法令上明確化されます。
海外投資家が日本でのデリバティブ取引を行った場合には、日本では課税しない(国内源泉所得ではない)事を明確化されます。
- 非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち、社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置の適用期限を2年間延長されます。
日本版スクークに係る登録免許税及び配当に係る非課税措置を延長します。
- 令和3年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに参加等をする非居住者及び外国法人にかかる課税の特例は、適用期限をもって廃止されます。
- 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度について、報告金融機関等の範囲に、海外投資家等特例業務届出者等が追加されました。また、報告事項の提出方法から磁気テープを除外します。
- 租税条約の相手国等の税務当局との情報交換において、個人番号を受領できることが明文化されます。
また、国際課税分野については、デジタル課税などの課税方針に留意が必要となります。次回のコラムで解説を致します。