海外との取引や外国子会社を通じた取引が頻繁に行われるようになってくると、特に外国子会社を複数社有するような会社においては、改めて海外ビジネスの方向性を検討する段階になり、外国子会社の組織再編が課題となってきます。今回は、「合併」を例に国内課税上の取り扱いについて整理します。
法人税法上の「合併」の意義
法人税法は合併の定義規定を設けていないため、外国法令を準拠法として行われる合併が、法人税法上の合併に該当するのか疑問が生じます。
この点、法人税法上の合併は、日本の会社法を準拠法として行われる合併に限定していませんので、外国法令を準拠法として行われる法律行為であっても、我が国の会社法上の合併に相当する法的効果を具備するものであれば、法人税法上の合併に該当すると考えられています。
日本の会社法自体も合併そのものについての定義規定を設けていませんが、その本質として、
① 消滅会社の権利義務の全部が存続会社に包括承継されること
② 消滅会社は清算手続を経ることなく自動的に解散して消滅すること
という要素を満たしていることが必要になります。
したがって、外国法令を準拠法として行われる法律行為であっても、これらの要素を具備し、我が国の会社法上の合併に相当するものと認められる場合には、法人税法上の合併に該当するものとして取り扱うのが相当であると考えられます。
我が国と同様の合併法制をもつ外国における判定
我が国と同様の合併法制を有する国における組織再編が日本の法人税法上の合併に該当するか否かについては、上記 ①・②の要件を実質的に満たしているかどうかを判定することになります。その後、税制適格・非適格の判断を行っていくことになります。
我が国と異なる合併法制をもつ、あるいは法制が存在しない外国における判定
我が国と異なる合併法制を有する、あるいは合併法制自体存在しない国における組織再編成が日本の法人税法上の合併に該当するか否かについては、
① 合併消滅会社の資産及び負債の全部が移転すること
② 合併消滅会社は資産及び負債の全部の移転後速やかに解散すること
③ 合併存続会社株式が合併消滅会社株主に交付されること
ただし、親子間合併等、株式が交付されないことについて特別な事情がある場合は除く
④ 当事者間の契約のみならず、上記①から③について、裁判所の許可等、当事者以外の機関による一定の法的手続きを経て行われること
合併に考慮されるべき要素として上の 4 点を挙げた上で、法形式のみならず、合併目的や経済的実態をも考慮して柔軟に判断することが適当であると考えられます。その後、税制適格・非適格の判断を行っていくことは「我が国と同様の合併法制をもつ外国における判定」と同じです。
適格要件を満たさない場合には、非適格合併となり、株主である日本法人においてはみなし配当を認識したうえで、保有割合及び期間に応じて外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けることになります。
今回は国内税制上の取り扱いを整理しましたが、現地における課税関係も検討しなければならないことは言うまでもありません。