コロナウイルスの影響により、海外進出企業が現地法人へ出向ではなく、出張ベースで現地に行く場合もあるかと思います。この場合は出張期間も短期から6ケ月以上の場合もあるかと思います。また、コロナウイルスの影響により思わぬ長期滞在となる場合も想定されます。
今回は、出張に伴う、「出張先国での税務上の問題」と「日本の法人税上の問題点」について確認してみようと思います。
出張先国での税務上の問題
(1)個人所得の問題:出張者の滞在日数管理
短期滞在者免税の条項(給与所得条項)が含まれている租税条約相手国に出張する場合は、出張先の法人から給与や手当等が支払われておらず、かつ出張先国での滞在期間が183日以内(タイは180日以内)であれば一般的には現地で課税の対象にはなりません。
しかし、出張の日数が多いと、滞在日数のカウントを間違えてしまい、結果的に滞在日数が183日を超えてしまったという事態も発生します。そのため、社員の海外出張日数は、本社の経理部・人事部等で厳格に管理し、183日を超えそうな出張者については、可能であれば、出張業務を別の方に担当させる等、管理することも必要になってきます。
(2)出張先国でのPEリスク
例えば日本の企業A社からB国に出張者を送り込み、現地で建設工事の監督業務などを行わせ、当該業務により日本本社が利益を得ているとします。この場合、当該出張者の業務が、現地税務当局から、「A社はB国内に恒久的施設を保有している」とみなされ、A社が当該業務から受け取る報酬について、A国で法人税が課されることになります。
どのような業務を行っていると「恒久的施設」に該当するかは、国によって「恒久的施設」の定義が異なるため一概にはいえませんが、日本と租税条約を締結している国については、当該租税条約の「恒久的施設条項」を把握しておく必要があります。
日本の法人税上の問題点
出張者にかかる費用負担
自社の社員を海外にある関連会社の業務支援のため出張させる場合、その出張費用や出張期間中の人件費を日本側が負担すると、日本の税務当局から「国外関連者に寄付を行っている」とみなされ、当該出張経費は、損金算入できず、寄附金として取り扱われる可能性があります。
海外の関連会社に社員を出張させる場合は、その費用を関連会社にも負担させることが必要になってきます(ただし現地にその出張者の費用を負担させると、短期滞在者免税の第二、第三要件を満たせなくなる場合があります)。
まとめ
出張先国で所得税の課税対象とならないよう、滞在日数管理を行う必要があります。特に、現地法人のための出張の場合は、出張費用等は現地法人に負担してもらうことをお勧めします。