今回は、海外勤務等により日本の非居住者となった方が、もともと勤務する内国法人から配当を受けた場合に、どのような課税関係になるかを整理していきたいと思います。
国内源泉所得としての配当
海外勤務等により日本の非居住者となった方が内国法人から配当を受け取った場合、その配当が国内源泉所得に該当すれば、日本で源泉徴収されることになります。つまり、その内国法人からの配当が「国内源泉所得」に該当するかで判断することになります。
所得税法第161条第1項において規定があり、内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息が国内源泉所得とされていますので、内国法人からの配当は「国内源泉所得」に該当します。
国内源泉所得に該当する場合の源泉徴収税率
① 非上場株式の配当
国内にPEを有していなければ、非居住者(個人)が非上場会社である内国法人から配当を受領した場合、20.42%の税率で源泉徴収され、源泉分離課税の適用を受けることになります。
② 上場株式の配当
上場株式の配当や公募投資信託の収益の分配等一定のものを受けた場合には、15.315%の税率で源泉徴収が行われます。
租税条約の適用による源泉徴収税率の減免
支払を受ける非居住者等の居住地国と日本との間に租税条約が締結されている場合には、その条約で定められている税率(限度税率)に軽減されることになります。
租税条約の適用を受けるためには、租税条約に関する届出(配当に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)を、最初に配当の支払いを受ける日の前日までに、配当の支払者を通じて所轄税務署長に提出する必要があります。
上場株式等の配当の場合には、上記に代えて、租税条約に関する特例届出書(上場株式等の配当等に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)を配当の支払取扱者に提出することになります。
いずれも適用を受ける租税条約の規定が特典条項の適用対象となる規定である場合には、「特典条項に関する付表(様式17)」も添付する必要があります。
租税条約による限度税率の例
中国 日中租税条約 第10条(配当)
その租税の額は、当該配当の受領者が当該配当の受益者である場合には、当該配当の額の10%を超えないものとする。
シンガポール 日星租税条約 第10条(配当)
当該配当の受益者が、利得の分配に係る事業年度の終了の日に先立つ6箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも25%を所有する法人である場合には、当該配当の額の5%、その他のすべての場合には、当該配当の額の15%