海外進出形態と税務管理 | アタックス税理士法人 国際部

海外進出形態と税務管理

2022年3月15日

コロナウイルスで海外進出をする企業は少し控えめとなってきました。しかし、アメリカなど一部の州ではマスク解除となり少しずつ「正常化」に向かいつつあります。

今回は海外進出にあたり、「進出形態と税務管理」という視点で解説します。

現地法人(海外子会社)を設立する利点は何ですか?

まず、日本親会社のリスク管理上の問題が挙げられます。

ここで言うリスクには、経済面でのリスクと法律面でのリスクの2つのものがあります。

経済面でのリスクは、海外拠点で生じる経済的ロスは、無限には日本親会社にかかってきません。日本親会社が負担する経済的リスクは、投資した資本の額と、貸付金の回収不能額までの両者の合計額までとなります。つまり無限責任ではなく、有限責任となるわけです。

法律面でのリスクも同様に、日本親会社とは法人格が違いますので、日本親会社とは一応切り離されています(法的リスクも大概の場合、最終的には経済的負担となりますので、無限に責任を負うことは無いということです)。

その他、日本親会社と現地法人の関係については、従業員の待遇を相違させやすいことや、その他諸々国内で子会社化する際のメリットとほぼ同様のことが挙げられると思います。また、税務上のメリットとしては、海外で得た利益に日本の法人税等がストレートにかからないということが挙げられます。

必要な資金の出し方はどうすればよいですか?

シンプルに言えば、現地法人の貸借対照表の貸方の割り振りの問題になります。つまり、資本で出すか、貸付(現地法人からみれば借入金)で出すかの2つです。ただし、この2つは投資利益の回収の際には、大きな違いが出てきます。

資本で出せば、配当という形での回収となり、貸付で出せば受取利子での回収となります。現地法人側から見ると、税前か、税引き後かという大きな違いが出ます。貸付(現地法人側から見れば借入金)の場合は税前となり、資本の場合は法人税支払後の利益剰余金からの配当となります。

一方日本親会社から見ると、受取利子の場合は日本で課税所得を構成しますが、配当の場合は、外国子会社配当益金不算入制度を使えばほぼ非課税所得となります。なお、相手国に過小資本税制の規定がある場合には、両者の割合に注意をする必要があります。

また、相手国の税率と、日本の税率に差がある場合には、グループ全体(連結でみて)の実効税率が最小になるよう考えることも重要になります。

現地法人とする際に注意することは何ですか

一番の重要な部分は、日本親会社と現地法人とは法人格が異なることです。このことに基因して生じる諸事項への対応をどうするかということに尽きます。

 設立までの諸費用を日本親会社が負担する部分と、現地法人が負担しなければならない部分との区分けをきちんとするところから始まり、法人設立後の立ち上げに対する日本本社の支援に要する費用への対応等、海外寄附金と認定されないようにすることが重要です。

その後運営していくに際して、日本親会社との係わりに関して、日本親会社はあくまで株主としての立場を貫くことが重要です。この株主という立場で要する費用は、日本親会社の経費となりますが、株主の範囲を超えた費用負担に関しては、常に海外寄附金や移転価格問題が発生すると考えておく必要があります。

加えて、特許権や商標権等ノウハウの日本本社からの提供についても同様の問題が生じることがありますので注意が必要です。また、現地法人の実効税率が日本のタックス・ヘイブン税制の対象となるほど低い場合には、日本のタックス・ヘイブン税制の適用除外基準を満たす様に現地法人の実態を整えるようにしなければなりません。

日本親会社と現地法人との取引については、税務上問題となることが多いので常に留意して下さい。

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