いまや海外企業との取引は日常的に発生して、様々な課税関係が生じます。海外進出企業はもちろんのこと、海外企業と取引の際にもっとも税務面で注意が必要なのが「源泉徴収による源泉税」です。
税務上は海外企業との取引については、「租税条約」というのがあり、国ごとに「源泉税」の取り扱いが違います。特にインド企業との取引については、他の国と取り扱いが違いますので、更に注意が必要です。
インドとの取引の事例
事例をもとに検討していきましょう。
当社はインドに子会社を設立しようとしています。そのために現地情報収集にともない、インド企業に情報提供料を支払います。この情報提供料を支払う際に、源泉徴収により源泉税が必要かどうかの判断が必要になります。
なお、情報提供の契約書には、「経営全般の指導、助言」とあり技術者の名称もなくコンサルタント業務的なものであるため源泉徴収の必要はないということが想定されます。実際に、源泉徴収の有無はどのように判定していくのでしょうか。
租税条約の取り扱い
この取引にかかる日本とインドの租税条約を見てみましょう。
日本インド租税条約第12条では、「技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的若しくは技術的性質の役務又はコンサルタン卜の役務の対価としてのすべての支払い」には、源泉徴収が必要とあります。
この、「技術上の役務に対する料金」とは、「技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的若しくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務としてのすべての支払金」と、かなり幅広い定義がされています。
インド企業が行う仕事は、情報活動という役務の提供であり、「経営的性質又はコンサルタントの役務」に該当すると考えられます。契約書の文面を「経営全般の指導、助言」とした場合、まさに「経営的性質の役務」に該当し、日本で源泉徴収が必要になると考えます。
インドとの特殊な論点
日本とインドとの租税条約が特殊な点は、「人的役務の提供事業」(役務提供地国課税)が条約で「技術上の役務に対する料金」とされ、「使用料」として「債務者主義(支払う国で源泉徴収)」に置き換えて課税が行われます。
さらに、今回のような場合には、仮に契約書の文面を変えたとしても、実質的仕事の内容が日印条約12条の「技術上の役務に対する料金」に該当すると考えられますので、源泉徴収が必要と判断されます。通常は、「人的役務の提供事業」について源泉徴収は不要ですが、インド企業との取引については、源泉徴収が必要になります。