コロナウイルスで一時期は税務調査が停止されていましたが、最近では、コロナ対策をしながらの税務調査が一般的となってきました。国税局の人事異動に伴い、税務調査連絡も多くなってきていると実感します。 今回は、国際課税ではどんな事項が指摘されてきたかを改めて確認したいと思います。
令和2年の調査実績
コロナウイルスの関係もありますが、令和3年11月に「令和2年度の法人税等の調査実績」が発表されています。
調査実績としますとコロナウイルスの影響もあり、25千件(令和1年は76千件、前年比32.7%)で申告漏れ所得金額は5,286億円(令和1年は7,802億円、前年比67.7%)となっています。
注意すべき点は、1件あたりの追徴税額が7,806千円(令和1年は3,135千円、前年比249%)となっており、実地調査件数は少ないが追徴税額が増加している点です。
また、実地調査ではなく税務署からの書面や電話連絡などの簡易調査については、68千件(令和1年は44千件、前年比156.5%%)で申告漏れ所得金額は76億円(令和1年は42億円、前年比179.2%)となっています。実地調査は減少しましたが、簡易調査は増えていたことが実績から読み取れます。
海外取引等にかかる調査等の状況
それでは、海外取引にかかる実績を見てみましょう。
実地調査は4,569件(令和1年は13,116件、前年比34.8%)で申告漏れ所得金額は1,530億円(令和1年は2,411億円、前年比63.5%)となっています。
また、外国子会社合算税制(タックスヘイブン課税)は、37件(令和1年は65件、前年比56.9%)で申告漏れ所得金額は92億円(令和1年は427億円、前年比21.7%)となっていますが、移転価格税制については、134件(令和1年は212件、前年比63.2%)で申告漏れ所得金額は502億円(令和1年は534億円、前年比94%)となっており、移転価格調査はコロナ前とかわらない課税を受けていることが読み取れます。
主な指摘事項
では、海外取引等についてはどのような指摘項目があるかを見てみます。
① 海外子会社等に対する費用負担(出向者給与等)
② 売上・原価・費用の期間損益計算の誤り
③ 外国子会社合算税制の適用誤り
④ 外国税額控除の適用誤り
⑤ 有価証券の取得にかかる財務調査費用
⑥ 移転価格税制上の問題点
などが挙げられています。
注意点
特に外国子会社合算税制と移転価格税制については、注意事項として下記が挙げられています。
外国子会社合算税制
① 平成29年度税制改正に関係するもの
租税負担割合20%超の外国関係会社の合算漏れ等、直接税制改正に関係する誤りの他、新たに合算対象となった外国関係会社について、税務部門の情報不足・検討不足による誤りが見られる。
② 平成29年度税制改正以前と同様の問題
非課税所得の加算漏れ等、税制改正以前と同様の誤りも未だに多い。
③ 別表17(4)・国別報告事項との整合
関係別表の記載内容(法人名・事業内容等)が、別表17(4)及び国別報告事項(CbCR)と整合しない場合、調査等で解明を求められることがある。
移転価格税制
独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)
租税特別措置法施行規則22条の6⑥
① 一 法第六十六条の四第一項に規定する国外関連取引(略)の内容を記載した書類として次に掲げる書類
具体的には…国外関連取引の内容を記載した書類として、国外関連取引に係る資産及び役務の内容や、国外関連取引において法人及び国外関連者が果たす機能・リスク、国外関連取引に係る法人及び国外関連者の損益の明細、事業の内容、事業の方針等を記載した書類
② 二 法第六十六条の四第一項の法人が国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類として次に掲げる書類
具体的には…独立企業間価格の算定方法、その方法を選定した理由、比較対象取引の選定方法、比較対象取引の明細等
また移転価格税制については、事前相談の活用も可能です。しかも、リモートで対応してくれるようです。移動時間の短縮ができますね。
税務調査での海外取引等については、国税局からの発表にあるように「外国子会社合算税制」「移転価格税制」については、今後もさらに調査で指摘される機会が増えてくると想定されます。これから税務調査の時期になります。今一度、自社に置き換えたとき税務上問題がないかどうかを確認してみてください。