「国外財産調書制度」の概要③~「国外財産調書」のメリット・デメリット~ | アタックス税理士法人 国際部

「国外財産調書制度」の概要③~「国外財産調書」のメリット・デメリット~

2022年12月9日

前回の続きです。

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国外財産調書制度は、12月31日時点において海外で保有する資産の合計額が5,000万円を超える人に届出を義務づける制度です。

国外財産調書には、適正な提出を確保するためのインセンティブ措置として加算税の軽減・加重措置が設けられています。

過少申告加算税等の軽減措置または加重措置

国外財産調書制度では、調書の提出を促すため、過少申告加算税・無申告加算税の特例が定められています。国外財産に係る所得税や国外財産に対する相続税の申告漏れ(過少申告)、無申告による修正申告書若しくは期限後申告書の提出する場合に、国外財産調書の提出ある場合とない場合で申告に係る過少申告加算税または無申告加算税の内容について取り扱いが変わります。

(1) 国外財産調書を提出した場合の軽減措置

国外財産に係る所得税や相続税の申告漏れがあった場合で、国外財産調書が期限内に提出され、その国外財産についての記載がある場合には、その申告に係る過少申告加算税・無申告加算税については本税額の5%に相当する金額を軽減した金額となります。

(2) 国外財産調書の提出がない場合等の加重措置

一方で、国外財産に係る所得税や相続税(※2)の申告漏れがあった場合で、期限内に国外財産調書の提出がない、または提出された国外財産調書にその国外財産についての記載がない場合には、その申告に係る過少申告加算税・無申告加算税については本税額の5%に相当する金額を加重した金額となります(※2 令和2年4月1日以降、相続や遺贈で取得した国外財産の相続税に適用されます。)。

ただし、災害や病気など、相続人の力ではどうにもならない、財産の内容や管理状況などから、相続財産の中に国外財産があることを把握することが難しい場合など、財産の保有者の責任と言えない場合においては、国外財産調書の提出がない場合でも、所得税や相続税の加重措置は適用されません。

(3) 期限後に提出された国外財産調書の取扱い

後日、国外財産が把握できたような場合など、国外財産調書を期限後に提出し、併せてその国外財産に係る修正申告等を行った場合については、その国外財産調書の提出が、所得税や相続税の調査によって更正または決定があることを予知してされたものでないときは、その国外財産調書は「提出期限内に提出された」とみなして、上記(1)または(2)の軽減措置・加重措置が適用されます。

令和4年度税制改正による見直し

国外財産調書の提出期限は、令和5年分から財産債務調書と同様に、翌年の3月15日までだったものが翌年の6月30日まで延ばされました。保有する財産の種類・数量・価格を正確に算出・記載することが必ずしも容易でないという理由からです。

また、提出期限後に国外財産調書が提出された場合の規定についても見直しが行われました。

従来は、提出期限後に国外財産調書を提出した場合であっても、税務調査によって更正または決定があることを予知していない場合に限って、期限内に提出したものとしていました。

しかし、令和6年1月1日以後は、「税務調査の通知」がある前に国外財産調書を提出した場合に限り、「期限内に提出した」ということになりました。主観に基づく「予知」ではなく、「調査の通知の前」という客観的な基準を明確にした改正だと言えます。

国外財産調書制度についての留意事項

国外財産調書制度では罰則規定もあり、国外財産調書を提出しなかった場合や嘘の記載をした場合には、1年以下の懲役又または50万円以下の罰金が科されることがあります。

また、令和2年度税制改正では、国外財産を有する者が国税当局より国外財産調書に記載すべき国外財産に関する資料を指定された期限(60日を超えない範囲)までに提示・提出をしなかった場合には、過少申告加算税等の軽減措置の適用はなく、加重割合も5%から10%になっている点も注意が必要です。

実際、相続の場面では、通常でも把握しづらい国外財産について当人ではない相続人がこれを把握して国外財産調書をまとめなければならず、その労力は大変なものとなります。

ましてや相続での金額は大きくなることが予想され、未提出等によるペナルティは大きな負担になると容易に想像できますので、未対応の方は早め早めに対応されることをお勧めいたします。

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