外国子会社合算税制(CFC税制)の見直し~2023年度税制改正~ | アタックス税理士法人 国際部

外国子会社合算税制(CFC税制)の見直し~2023年度税制改正~

2023年1月16日

日本のCFC税制の概要

日本のCFC税制とは、外国子会社を利用した租税回避を防止するために、外国子会社などがペーパーカンパニー等である場合や経済活動基準(※1)のいずれかを満たさない場合に、その外国子会社などの所得に相当する金額について、日本の親会社等の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。

また、外国子会社などが経済活動基準を全て満たす場合であっても、実質的活動のない事業から得られる所得(いわゆる受動的所得※2)についても、日本の親会社等の所得とみなし、それを合算して課税することも行われます。

ただし、企業の事務負担に配慮をして、外国子会社などの租税負担割合が一定以上(※3)の場合には本税制の適用は免除されます。

※1 経済活動基準

(1)事業基準(主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと)

(2)実体基準(本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること)

(3)管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること)

(4)次のいずれかの基準

                   ① 所在地国基準 (主として本店所在地国で主たる事業を行っていること)

                   ② 非関連者基準 (主として関連者以外の者と取引を行っていること)

※2 受動的所得

配当等、利子等、有価証券の貸付対価、有価証券の譲渡損益、デリバティブ取引損益など

※3 租税負担割合

ペーパー・カンパニー等は30%、それ以外の外国子会社等は20%

CFC税制見直しの背景

2024年に予定されるグローバルミニマム課税の導入による企業の事務負担増加に対応するため、CFC税制の簡素化が要望されていました。グローバルミニマム課税の導入により、世界中でどのような形態で事業を展開したとしても一定水準まで税収の確保が可能となります。

それにより軽課税国への事業や資産の移転にかかる誘因が低下し、CFC税制における租税回避の防止という目的も一定程度達せられると考えられます。この点から、現行CFC税制の運用により生じている課題も踏まえ、CFC税制を簡素化する余地があると考えられました。

具体的には、

①租税負担割合算定の負担を軽減するため、特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)のトリガー税率の引き下げ

②申告書作成に関する事務負担を軽減するため一定の外国関係会社に係る書類を申告書に添付する義務の緩和が行われます。

2023年度税制改正による見直し

グローバルミニマム課税の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、次の見直しを行うこととされています。

(1)        特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)の租税負担割合が27%以上(現行:30%以上)である場合には、会社単位の合算課税の適用を免除

(2)        部分対象外国関係会社(経済活動基準を充足し、会社単位の課税を受けず、受動的所得に対する課税のみを受ける会社)について、一定の書類の添付を除外(保存は必要)

① 部分適用対象金額がない部分対象外国関係会社

② 部分適用対象金額が2,000万円以下であること等の要件を満たすことにより本制度が適用されない部分対象外国関係会社

(3)        株主等の氏名、住所、保有する株式数等を記載した書類について、これまでの租税負担割合がトリガー税率未満の全ての外国関係会社の株主等の情報を記載した書類に代えて、「外国関係会社と株主等との関係を系統的に示した図」に株主等の情報を記載したものにすることができる

上記の改正は、2024(令和6)年4月1日以後に開始する内国法人の事業年度(外国関係会社の事業年度ではない点に留意)から適用されます。

最後に

今回の改正により、現在、ペーパーカンパニー等として課税されている外国子会社の一部は、トリガー税率引き下げにより合算課税の適用が免除されることになります。

2022年1月現在、米国カリフォルニア州の実効税率:27.98%、ドイツの実効税率:29.83%(財務省webサイトより)ですが、関係する外国子会社が多い国を意識した改正は、実務からの要請かもしれません。

また、財務諸表等の添付要件も緩和されましたが、添付が不要な場合であっても保存が必要な点については引き続き留意が必要です。整理する書面の準備は変わらず、今回の改正は、追加的な事務負担に配慮した若干の見直しと言え、実務負担を十分に軽減したものではありません。

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