令和5年の国際税務の税制改正~国外転出時課税の納税猶予の手続き簡素化~ | アタックス税理士法人 国際部

令和5年の国際税務の税制改正~国外転出時課税の納税猶予の手続き簡素化~

2023年2月3日

令和4年12月16日に与党から公表された「令和5年度税制改正大綱」を基に国際税務の税制改正の中で、便利になった項目を説明します。それは、国外転出時課税制度に関する納税猶予の手続きの簡素化です。

国外転出時課税とは

平成27年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設されました。これは、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税される税制です。

従って、国外転出時(出国時)に譲渡所得の確定申告をして、納税する必要があります(国外転出時課税についてはコチラをご参照ください)。

納税猶予制度とは

国外転出時課税の申告をする方が、国外転出等の時までに納税管理人の届出をするなど一定の手続を行った場合は、担保を提供した場合に限り、国外転出時課税の適用により納付することとなった税額について、納税を猶予することができます。

これは5年間の猶予ですが、一定の条件を満たすと最長10年の延長が可能です。

納税猶予の担保とは

国外転出時課税制度の申告をする方が、国外転出時課税制度の納税猶予の特例の適用を受けるための担保として提供できる財産として、国外転出時課税制度の対象となった非上場株式があります。しかし現状では、非上場株式を担保とするためには、次の①及び②をしないといけません。

① 株券の発行がされていない場合には、会社に対して株券の発行を請求(株券を発行する)。

② 譲渡制限が付されている場合には、譲渡について取締役会の承認を受けて、譲渡可能としたことを証する議事録の写しを税務署に提出する。

現在は、ほとんどの企業が株券不発行となっており、わざわざ株券発行する必要があり、非常に使い勝手が悪いです。

国外転出時課税制度に関する納税猶予の手続き簡素化

今回の改正で、国外転出時課税制度の対象となった非上場株式に「質権設定」を行うことで、「株券不発行でも担保提供が可能」となりました。これにより、手続きが一気に簡素化され適用しやすくなります。

今までは、納税猶予にあたり国外転出時課税制度の対象となった非上場株式を担保とすることは株券発行がネックになっていましたが、株券を発行せずに担保とすることができるので、実務上はかなり便利になったのではないでしょうか。

適用時期は明確に記載されていませんが、1日でも早い改正が望まれます。

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