日本法人は国内・国外すべての所得に対して課税されるのが原則です。
国外での取引があり、相手国で外国法人税(控除対象の税金と控除対象外の税金があるので注意が必要です)を支払う場合、日本法人は日本と相手国の両方で課税される「二重課税」の状態になります。
この二重課税の解消を目的とした制度が、外国税額控除制度です。ただし、外国税額控除には控除限度額が設定されており、控除対象となる外国法人税のすべてを支払った事業年度で控除できないこともあり、その場合は、翌期以降に繰り越しされます。今回は、外国税額控除の繰り越しについて解説いたします。
外国税額控除限度額の計算
控除限度額は、以下の計算式によって算出します。
(1)日本法人税額(全世界所得分)
(2)調整国外所得金額(※)
(3)全世界所得金額
→(1)×(2)÷(3)
(※)調整国外所得金額とは、国外での所得金額から外国法人税が課税されない国外源泉所得の金額を差し引いた額を指します。ただし、所得金額×90%を超過する場合は「所得金額×90%」の計算式で算出します。
控除限度額の繰越
外国税額控除を行う場合、以下のケースが生じ、それぞれ翌期以降に繰り越します。
① 外国法人税を控除しきれない(控除対象法人税額が控除限度額より高い)
② 控除限度額に余りが生じた(控除対象法人税額が控除限度額より低い)
①控除限度額が超過している場合
控除限度額よりも控除対象外国法人税額が多い場合、控除しきれない金額を翌期以降、3年にわたり繰り越すことができます。
したがって、翌期以降に控除限度額に余りが生じた場合には、繰り越した外国法人税が控除されることができます。
②控除限度額に余裕がある場合
控除限度額よりも控除対象外国法人税額が少ない場合、控除限度額に余りが発生します。この控除限度額余裕額も、翌事業年度以降3年間、繰り越すことができます。
したがって、翌期以降に控除限度額が超過している場合には、繰り越した控除限度余裕額より控除することができます。
外国税額控除は、事業年度によって税額控除を受けるか損金算入するかを選択できますが、上記のような控除額の繰り越しを行っている事業年度に損金算入を選択した場合には、その事業年度以前の繰越額が切り捨てられてしまうので注意が必要です。
制度の要件をしっかり確認した上で、適用するか否かを判断しましょう。
~外国税額控除に関する過去の記事はコチラ(記事内容は記事公開時の税制に基づきます。その後の改正にご注意ください。)~
https://www.attax.co.jp/kokusai/column/post-2388/
https://www.attax.co.jp/kokusai/column/post-2177/
https://www.attax.co.jp/kokusai/column/post-1003/