令和5年の税制改正では、年間所得が3.3億円超の納税者において、3.3億円超の部分の所得に対する所得税額の割合が22.5%を下回る場合、この22.5%との差分を追加課税する超富裕層課税が設けられました。この超富裕層課税は富裕層ほど所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の是正が目的と言われています。
この「1億円の壁」とは、所得税などの負担率が所得1億円を超えると急激に下がってくる現象で富裕層ほど株式譲渡益など分離課税となる金融所得の割合が多くなるため全体の所得に対する税の負担率が低下するという問題です。
所得税は、所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税を採用しており、住民税などを含めると最高税率は55%になりますが、上場株式の譲渡益などについては20.315%(住民税、復興特別税含む)の申告分離課税で課税が完了するため、このような状況が生まれます。
【本来の所得税額に追加する税額】
(基準所得金額(※1)-3.3億円)×22.5%-基準所得税額(※2)=追加納付する税額
(※1)基準所得金額:その年の所得税について申告不要制度を適用しないで計算される合計所得金額(適用する特別控除額を控除した後の金額)
(※2)基準所得税額:基準所得金額に係る所得税の合計税額
(※3)上記計算にはNISA制度などの非課税所得は対象から除かれます
(※4)令和7年分以降の所得税より適用
また、多くの富裕層は国内で金融資産を保有するばかりでなく、海外で金融資産を保有・運用することも多いと思います。これまで、海外の金融資産の運用での課税のほとんどが、課税負担が低く固定されていた申告分離課税で済んでいたものが、今回の超富裕層課税によって影響を受ける可能性が出てきました。海外での個人保有の金融資産の在り方を法人保有に切り替えるなど、税制が具体的に施行されるまでに検討が必要かもしれません。