情報交換実績を読み解く~国際的な租税回避への関心高まる~ | アタックス税理士法人 国際部

情報交換実績を読み解く~国際的な租税回避への関心高まる~

2023年3月15日

国税庁は1月31日、「令和3事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を公表しました(参照:国税庁HP) 。

令和3事務年度は、CRS情報については、94か国・地域の外国税務当局から日本居住者の金融口座情報250万664件を受領した一方、国税庁から外国居住者の金融口座情報65万1,794件を77か国・地域の外国税務当局に提供しています。

また、「自発的情報交換」について、国税庁は448件の受領、73件の提供を行っており、「要請に基づく情報交換」については、国税庁から639件の要請を行い、外国税務当局から128件の要請を受けているようです。

租税条約等に基づく情報交換とは

納税者の取引などの税に関する情報を二国間の税務当局間で互いに提供する仕組みです。この租税条約等に基づく情報交換には、次の3つの形態があります。

1.要請に基づく情報交換

2.自発的情報交換

3.自動的情報交換

参照:国税庁HP

CRS(共通報告基準)とは

外国の金融機関等を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処するために、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準(CRS: Common Reporting Standard)です。

各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供します。

また、国内に所在する金融機関等は、平成30年以後、毎年4月30日までに特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告し、報告された金融口座情報は、租税条約等の情報交換規定に基づき、各国税務当局と自動的に交換されることとなります。

参照:国税庁HP 

実際の活用事例

① 未納税金の徴収

滞納者 A は、日本に居住している X 国籍の者であり、勤務先の日本法人からの給与収入や報酬等について、確定申告を行ったが、その国税を納付しなかった。滞納者 A の国内の財産では徴収が不足していたところ、X国から受領した CRS 情報から、国内調査では把握していなかった滞納者 A 名義のX国国内の預金口座を把握した。

そこで、国税庁は、租税条約に基づき、X国の税務当局に対して徴収共助の要請を行った。その結果、上記預金について、X国税務当局により差押え及び取立てがなされ、徴収することができた。

② 架空取引の把握

内国法人 Bは、日本国内で仕入れた宝石類を Y国に輸出し、Y国に所在する取引先の法人へ販売することで、輸出売上を計上し、仕入に係る多額の消費税の還付申告を行っていた。内国法人B の調査において、取引資料に不審点があったため、Y国税務当局に、取引先の法人の経理処理等が分かる資料の提供を要請した。

その結果、当該取引は実在しないことが判明し、内国法人B が架空仕入及び架空売上を計上し、不正に消費税の還付申告を行っていた事実を把握した。

今後も、個人投資家の海外投資や企業の海外取引が増加するなど、経済社会がますます国際化していきます。富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しのほか、各国の税制の違い等を利用して税負担を軽減する等の国際的な脱税及び租税回避に対して、関心が大きく高まっている状況にあります。

ますます、国際的な脱税及び租税回避の把握や防止に対する取り組みが進んでいくことが見込まれます。

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