相続税の外国税額控除を整理! ~海外の財産にも外国の相続税がかかります!~ | アタックス税理士法人 国際部

相続税の外国税額控除を整理! ~海外の財産にも外国の相続税がかかります!~

2023年6月16日

近年のグローバル化によって個人が資産運用の選択肢を海外に広げ、海外の不動産や金融資産を保有することは当たり前の時代となりました。

今回は、国外の財産にも外国の相続税がかかり、日本の相続税との関係でどう処理するかを整理します。

相続税の外国税額控除

日本の相続税では、原則として日本国内にある財産だけでなく、国外にある財産にも課税されます。そして、国外に財産がある場合は、日本の相続税だけでなく、財産のある外国の相続税もかかる場合があります。このように、国外財産に対して、日本と外国の双方において相続税が課される、いわゆる二重課税となる場合があり、この二重課税を回避するために相続税の外国税額控除の制度が設けられました。

(1) 制度の概要

外国で相続税を納めた場合、その外国で納めた相続税額を上限として、日本の相続税から控除することができます。控除額は、次の①か②のいずれか少ない金額です。

  • 外国で支払った相続税額
  • 日本での相続税額×(外国にある相続財産額合計/相続人の相続財産額合計)

(2) 具体的な計算事例

計算事例については、以下の通りとします。

国内財産を1億円、国外財産2億円を相続日本において、9,000万円の相続税を支払い国外で100万ドルの相続税を支払い納付日のTTSは130円、送金日のTTSは132円

上記条件の場合、「外国で支払った相続税額」の計算は、

  • 100万ドル ✕ TTS 132円(納税者有利の送金日TTSを使用)= 1億3,200万円
  • 日本国内の相続税 9,000万円 ✕ (国外財産2億円 ÷ 相続財産合計 3億円)= 6,000万円

上記計算式から、外国税額控除の額は6,000万円となります。

外国税額控除を受けるための要件

相続税の外国税額控除の適用を受けるには、次の1、2の両方の要件を満たす必要があります。

  • 相続又は遺贈によって、日本国外の財産を取得した者
  • 日本国外の財産について、その外国で相続税が課された者

外国にある財産を相続し、その外国で相続税が課された者が外国税額控除を受けることができます。

ただし、被相続人と相続人の外国での居住状況によっては、外国の財産に日本の相続税が課税されない場合があります。この場合は、相続税の二重払いが生じていないので、外国税額控除の適用はありません。

被相続人と相続人の外国での居住要件

被相続人と相続人の双方が、10年を超えて外国に住んでいる場合は、国外の財産には日本の相続税は課税されません。つまり、国外財産を相続した場合で、かつ相続した国外財産に当該国の相続税が課せられた場合、適用となります。そのため、日本の相続税が国外財産に課されない外国籍の相続人などは、そもそも二重払いとはならないことから、外国税額控除の適用は原則的にできません。

それ以外の場合は、外国の財産にも日本の相続税がかかりますので、外国税額控除の適用を受けることができます。なお、日本国内にある相続財産については、被相続人と相続人の海外での居住期間に関わらず、日本の相続税が課税されます。

相続税申告時の外国税額控除の手続

外国税額控除の適用を受けるための必要書類は以下となります。

  • 相続税申告書第8表(外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書)
  • 外国で支払った相続税額を証する書類(外国の相続税申告書など)

上記第8表に外国で支払った税額や控除額を記載して、証明書類を相続税の申告書に添付し、申告期限までに提出します。

海外資産の相続手続

海外資産に関する相続税の取扱いは、資産の所在や被相続人・相続人の国籍、住所地などにより適用される法律が異なるなど非常に複雑です。また、海外資産の所在地によっては、検認裁判(プロベート)の手続も必要です(プロべートについてはコチラもご参照ください)。検認裁判(プロベート)が必要になれば、海外の弁護士等への高額な報酬が必要となるなど費用も時間もかかり大きな負担になってしまいます。

外国での相続申告が想定される場合には今後の対応も見据えて日ごろから税理士に相談するなど準備しておくことをお勧めします。

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