源泉税の調査ポイント ~使用料の範囲はどこまでか~ | アタックス税理士法人 国際部

源泉税の調査ポイント ~使用料の範囲はどこまでか~

2023年9月15日

コロナ問題も沈静化し、実地調査を中心とした税務調査も再開されてきました。

そこで、今回は源泉税務調査における使用料にかかる源泉税について考えていきたいと思います。

源泉税調査での指摘

源泉税の調査で一番の問題となるのが、非居住者に支払う「使用料の源泉漏れ」です。

内国法人や居住者に使用料などを支払う場合にはあらかじめ「源泉税」が明確となっているため、 あまり問題となることはありません。

内国法人または居住者ではなく、外国法人または非居住者に使用料と支払う場合は、ほとんど源泉税の徴収もれを指摘されます。これは、調査官が「この支払は、工業所有権等となりますので、源泉徴収が必要です」と指摘してきます。

特に最近は、契約書などを細かく確認せず「ソフトウエアの使用料だ、ノウハウがある、翻訳料は著作権だ」など、取引の名前だけで指摘することがほとんどです。

そもそも、使用料って何

使用料とは次に記載する通りです。

【所得税法第161条第1項11号】

国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るもの

 イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価

 ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価

 ハ 機械、装置その他政令で定める用具の使用料

さらに所得税基本通達 161-35では、使用料の定義を次のように記載しています。

 ・工業所有権等の使用料とは、工業所有権等の実施、使用、採用、提供若しくは伝授又は工業所有権等に係る実施権若しくは使用権の設定、許諾若しくはその譲渡の承諾につき支払を受ける対価の一切をいい、同号ロの著作権の使用料とは、著作物(著作権法第2条第1項第1号《定義》に規定する著作物をいう。以下この項において同じ。)の複製、上演、演奏、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物の利用又は出版権の設定につき支払を受ける対価の一切をいうのであるから、これらの使用料には、契約を締結するに当たって支払を受けるいわゆる頭金、権利金等のほか、これらのものを提供し、又は伝授するために要する費用に充てるものとして支払を受けるものも含まれることに留意する。

 長いですね。要は「著作権法の著作物かどうか」ということです。

実務上の判断

調査においては、実態に合わせて判断をすることになりますが、結局は、「著作権」なのか「著作物」なのか、その上で、「使用料」なのか「譲渡」なのかの4パターンに分類されると思います。

使用料には、譲渡も含まれるので、注意が必要です。調査官は、「著作権、著作物」がある前提で、下記のような指摘をしてきます。

A.「著作権の譲渡」に該当する場合

例えば、ソフトウェアを改変して再配布できるような著作権の完全な購入に該当する場合です。

ただし、著作権の一部だけでなくすべての権利が完全に移転していることが必要です。

これは、著作権の譲渡で源泉徴収が必要となります。

B.「著作権の使用」に該当する場合

Aの「完全に」とは異なり、著作権の権利の一部が移転している場合です。(例えば、購入したままの状態で二次配布できるが、改変して配布する権利まではない場合)著作権の使用とみなされ、源泉徴収が必要となります。

C.「著作物の譲渡」に該当する場合

例えばCDを買ってソフトをインストールして使う場合やダウンロードサイトからソフトをダウンロードして使う場合です。これは、著作物の譲渡で源泉徴収が必要となります。

D.「著作物」の使用に該当する場合

Cの事例で、著作物を購入した後、ソフトウェアメンテナンスに対する支払、第三者に貸与等するために対価を支払う場合です。

調査で一番大事なポイントは「その取引が著作権、著作物に該当するかどうか」です。

税務調査官は、税の専門家ではありますが、著作権の精通者ではないので、そもそも税務調査では判断できないものと考えます。

従って、会社として「著作権に精通している者に事実認定をしてもらい、著作権に該当するかどうかの鑑定意見書」を作成して源泉徴収の有無について確認してから、税務調査に挑むのが望ましいと考えます。

実務的には、税務上はその取引が著作権に該当した場合に源泉徴収という取り扱いになります。安易に妥協せずに、調査官の指摘事項をよく確認するようにして下さい。

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