海外へ長期出向する前に要チェック!~国外転出時課税制度とは~ | アタックス税理士法人 国際部

海外へ長期出向する前に要チェック!~国外転出時課税制度とは~

2019年11月22日

自社株を保有する後継者が経営者へのステップとして、 海外子会社や海外関連会社等へ長期出向する場合があります。

今回は、うっかり見落としがちな国外転出時課税、いわゆる出国税についてお話します。

株式等の含み益(キャピタルゲイン)を有する人が出国し海外へ移住したあと、 その国でその株式等を売却し譲渡益が生じても一定の場合には日本では課税されないという事態が起きていました。

そのような租税回避行為を防止する観点から、出国時における株式等の含み益に対して 日本で課税する制度が2015年度の税制改正で導入されました。

具体的には、出国(国内に住所等を有しなくなること)するときに1億円以上の 有価証券や未決済の信用取引などの対象資産を持っていると、 出国時に所有する有価証券を売却したものとみなして、その含み益について 15.315%の譲渡所得税を納めることになります。

このような出国税の存在を知らずに、1億円以上の価値のある株式等(自社株)を保有する 後継者がうっかり海外子会社などへ長期出向してしまうと、思わぬ痛手を被ることになります。

譲渡所得税に加えて無申告加算税や延滞税といったペナルティまで課されます。

また、出国の場合だけでなく、海外に在住する家族や留学中のご子息等に この含み益のある株式等を贈与する場合にも同様に課税が行われるため注意が必要です。

この出国税の痛いところは、いわゆる未実現の含み益に課税が行われますので、 納税資金がないところで課税が行われるという点です。

こういった納税資金が十分でない場合を考慮して納税猶予制度が設けらています。 いわゆる譲渡益課税の猶予です。

要件としては、 5年以内(申請により10年)に帰国されることが予定される場合には、 出国する前に納税管理人を定めるなど一定の届出を行って この納税猶予制度を活用することができます。

一方で、出国税が課された場合でも、出国後5年以内に帰国した場合には、 帰国の日から4か月以内に更正の請求をすることで、帰国時まで保有している株式等に 対して、課税を取り消すことができます。

事例として、先日ある会社オーナーのお嬢様がご結婚されたご主人の転勤に帯同して 海外へ長期移住するというお話をいただいた際、 このお嬢様が保有される自社株が出国税の対象となることが事前に判明しました。

そしてお嬢様に出国税を説明し納税猶予制度を活用するご提案をして納得してもらいました。

お客様ご本人やご家族が長期にわたり出国されるお話がありましたら、 出国税への対応が必要かどうか、まずチェックすることをお忘れなきよう 今一度ご注意ください。

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